【小説】

■□ やの付く自営業 れの付く自営業 2 □■




「おう、一時は駄目かと思ったぞ・・・」

其の声で俺は目を覚ます。

寝る前の部屋から変わって、大部屋のようだ。

どうやら昼ごろのようだ・・・・日差しが窓から差し込む。

数人の話声が聞こえる。

機械は幾つか付いた儘だったが、前よりも少なくなっていた。

「・・・あにき・・・・」

兄貴は無事だったようだ・・・俺は安堵の笑みを漏らす。

彼は何時もの白いスーツに身を包みオールバックにし、サングラスをかけた格好で笑っていた。

「大丈夫か?是は見舞金だ・・・・」

そう言い放り投げられる茶封筒。

可也ぶ厚い其れ。

病院と言う配慮なのか、彼の口には火の付いていない煙草が有った。

「・・・すいません・・・・」

俺は身を起こそうとする。

「良い・・・・その儘にしてろ・・・何せ、頭を銃弾が貫通したんだ・・・

本当、良く生きてよなぁ・・・」

そう言うと、俺の包帯で巻かれた額を指差しなぞる。

俺は乾いた笑いを返す。

本当に・・・自分でも驚いた・・・其の事実・・・。

どうやら、あの化け物の夢は満更嘘という訳でも無さそうだ・・・。

「一週間は絶対安静だそうだ、其れまでは休暇だと思って有意義に過ごせや・・・」

そう言うと、兄貴は席を立ち、その儘、手を振りながら出て行ってしまう。

「ありがとうございます・・・・・・」

俺はそう言うと、懇親の力で起き上がり礼をする。

彼が出て行く・・・其の拍子にベッドに凭れ掛かる。

ふぅ・・・疲れた・・・・。

俺はボーっと天井を見る。病人だから当たり前なのかもしれないが・・・。

小一時間経っただろうか・・・・。

「嗚呼、困ったのぉ・・・・」

ふと、その台詞が過ぎる。

何だ・・・?俺は何気なく声のしたほうを見る。

何てことは無い、隣のベッドの爺さんが困った顔をしてブツブツと何か言っていただけだ。

俺はその儘眠る・・・ったく、・・・何かと思ったじゃんか・・・・。

そう思いながら・・・。

次に目を覚ましたのは夕方ごろ。可也眠っていたらしい・・・・。

俺は跳ねた頭をかきながら欠伸をする。

「嗚呼、困ったのぉ・・・・」

ふと・・・・又あの声。

俺は気になり・・・・声の方を向いて言ってやる。

「じいさん・・・・何か困ってるのか?」・・・と。

「おぉ・・・・お若いの、聞いてくれるか?」

声はそう帰ってくる。

まぁ、一週間此処にいなきゃいけない訳だし・・・・。

「いや・・・暇だし・・・聞くぐらい・・・」

「有難い、いや・・・最近ばあさんが見舞いに来なくて久しくてな・・・・、

手紙を書いていたのだが・・・渡せずじまいなのじゃ・・・」

何やら大きくなりそうな話しに身を乗り出す俺。

「へえぇ・・・・ばあさんと喧嘩でもしたのか?」そう言って見る。

「うぬ・・・・少し行き違いがあってな・・・わしも言い過ぎたと反省して居るのだが・・・、

こう・・・・言い辛くてな・・」

「嗚呼、解る・・解る・・・・言い過ぎても誤り辛いもんな」

俺も、其れで可也、損をした人生を送ってきたから・・・

「そう、其れでわしは、ばあさんに手紙を書いたのじゃが・・・・それからトンと来なくなってしもうた・・・」

項垂れる爺さんは、傍から見ても相当同情を誘って・・・・

「へぇ・・・・」

俺は爺さんの手助けをしてやろうと決める。

「良し!爺さん俺が人肌脱いでやるよ、ばあさんに其の手紙渡しに行ってやる!」

「すまんな若いの・・・・」

次の瞬間、皺くちゃの顔を深め笑顔になる。

俺は照れくさくなり、そっぽを向き鼻を掻く。

「嫌々、困ったときはお互い様ってな・・・・」

と言い再び其方を振り向く。

其処には空っぽのベッド、そして何故か手には封筒が・・・・。

「・・・・爺さん・・・?」

何の反応も無い・・・・・・。

「あら持田さん如何したんですか?」

俺を呼ぶ声に反応する。

看護婦が何時の間にか入ってきていた。

見ると看護婦さんが心配そうに俺を除き見ていた。

「嗚呼・・・いえ・・・・・其処に、爺さんが居たんだが・・・」

隣のベッドを指差し俺は呟く。

看護婦は其れを怪訝そうな顔で見ると、口を開く。

「あら・・・・若しかして、隣の山岸のおじいちゃん?」

「いや・・・名前は聞いてないんだが・・・・」

ふと、手の封筒を見る。差出人・・・・山岸泰蔵・・・・。

「嗚呼そう・・、山岸のじいさん・・・・・」

そう言ったとたんだった・・・・看護婦は可笑しな物を見るような目で俺を見る。

「何いってるんですか・・・山岸のおじいちゃんは貴方が入院した日・・・4日前にお亡くなりになりましたよ?」

「え・・・・?」

・・・じゃあ俺が会ったあの爺さんは?

フリーズする俺、悪寒が背筋を通る。

ひいいいいいいいいいいいい!

それから俺は布団に包まったまま顔が出せなくなってしまった。

「持田さん?大丈夫ですか?持田さん??」

看護婦は丸まった俺を見て、体調が悪くなったのかと勘違いしたのか、懸命に揺する。

其れを遠くに聞き俺は顔を青ざめさせ、訳の解らないお経を唱えていたのだった。

何を隠そう、この俺。持田 猛34歳・・・泣く子も黙るヤクザ家業の癖に・・・

そう・・・・お化け、幽霊、等など・・・・腰が抜けるほど苦手なのだった。

まぁ、だから何時まで経っても、三下ヤクザと言われてしまうのかもしれないが・・・・。

病院の朝。

小鳥の囀り、清潔なカーテンが揺れる。

そんな清潔な風景の中、俺は目の下に隈を作り、其れを眺めていた。

・・・怖くて・・・寝れなかった・・・・。

そう・・・・情けない事だが・・・。

其の上、其れから俺は変な幻覚を見ている。

今だって・・・・目の前を青白い人間がウロウロしている。

外では黒い大きな物が浮いていた・・・・・・。

是は俺にしか見えてい無い様だ・・・・何故って?

それは簡単、目の前の青白い人間は先ほど看護婦が其処を通り抜けたからだ・・・・。

・・・・挨拶しちゃったよ・・・・

外の黒い大きな物は・・・浮いてる時点で解った・・・・。

トホホ・・・・・。

此処にいたら安眠は出来ないだろう・・・・如何すれば・・・。

そう考えていた時・・・・、ふと・・・手紙を思い出す。

・・・そうだ!

此処にいるから変な幻覚を見ちまうんだ!

あの手紙を返しがてら外を散歩すれば少しは変わるだろ・・・

そう思い、俺は散歩がてら、爺さんの手紙を渡しに行くことを決めるのだった。




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