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■□ 三国一 5 □■ 馬商人の護衛兵というのは、意外にも楽な仕事ではなかった。 まず、玄と俺は馬なんて物に乗った事が無かったからだ。 そして以外にも、問題発言を初対面で言い放った、范彊に俺達は助かっていた。 馬の乗り方から、慣れない馬上での戦いの訓練相手になってくれたのである、まぁ、 俺を崇拝している節があるのであまり親しくはしたくなかったが。 俺達は何時もどおり、大旦那様である蘇双とその仲間の張世平を警護していた。 行き先は河東郡解。何やら、馬に食べさせる塩を買いに行くらしい。 勿論、塩も国が管理する物の一つ。そうめったにお目にかかれる物ではない、 しかし実情は密輸が横行して、大旦那が密輸の塩を購入しに来たのだった。 恙無く、取引は成立し。帰りの岐路についたときだった。 西関が騒がしい、何やら役人が殺されたらしい。 役人を殺すと重罪だ、それも此処の役人は特別地位が高い。 まぁ俺達も事が公になれば危険ではあった。 密輸で塩を買ったのだから。 俺達は手綱を引いて一番手薄な、蒲州城の南を通って抜け出ようと思ったときだった。 茂みの中から声がする。ふと俺はそこに目をやる。 「おい!すまないが追われている。匿ってはくれないか?」 ふと声のするほうをみると、195cmはある大男が小さく身を潜めていた。 「・・・どうかしたのか?」 どう見ても厄介ごとの部類に入りそうである。 「俺の名は常生、西の関で暴利を貪る役人を殺してしまってな。それで追われているんだ。」 案の定だ、恐らく役人が探すお尋ね者はこいつだろう。 「俺達も塩を密輸商人から買ったところで、脛に傷をもってる身だ、すまないが・・・」 「其処を何とか!」 それにこんな大男を隠せるほどの場所もない。 考えあぐねていると、玄に背後から声を掛けられる。 「あ、益徳どうしたの?」 密輸していて、今大変危機的にも関わらず、のんびりとしていた。 「あ、玄徳・・・・、こいつが匿ってくれって・・」 無理だと念を押して貰いたくて、俺は玄を見る。 「頼むこの通りだ!」 奴は、平伏して拝み倒している。其れを見た玄は。 「益徳どうにかしてあげなよー」 と暢気にいったのだった。 えええ!?玄、今何も考え無しで言ってるでしょ?! 何かいつも玄の発言で振り回されている俺が居る・・・・ しかし、此処は惚れた物の弱みというほか無いだろう。 彼の望みなら何でもかなえたい。 俺は思案する。塩は恐らく大旦那が金をつかませて逃れるが。 こいつは如何せん役人を殺している。 色白の男で、顔はきりりとしたハンサムだ。しかしそれはとても目立つ。 是を隠すとなると・・・・うーん。俺はふと変な案を思いつく。 「嗚呼、解った。・・・・だけど今からやることを甘んじて受けろよ?」 一応念を押しておく。 「勿論だ。有難い・・・」 その返答を聞いた瞬間。俺は躊躇せず、奴の顔を殴りつける。 マウントポジションで顔の形が変わるぐらい。 殴られた奴も相当驚いたのだろう。目を見開いている。 肝が据わっているらしく、叫びはしなかったが。 さすがの玄もそれにはびっくりしたらしく、咄嗟に止めに入る。 「え!?ちょ!?・・・・・益徳・・・な・・・何を?」 それでも俺は、是でもかと殴り続けた。 ふぅ、これで良いかな・・・・・ 俺は血まみれになり、赤くなった顔を指差す。 元の顔が、色白でハンサムでなければいいのだから。 赤ら顔の、醜男の出来上がりだ。 蛸殴りにされてもハンサムだったら反対に怖いが。 うーん、是でも下手したら目ざとい奴が見つけてしまうかも。 「おーい、范彊ちょっと来い」 嬉しそうに来る。 「なんですか?親分」 良い奴なんだよ本当に。 「ちょっと目瞑ってな」 「え?あ、はい?」 うろたえながらも奴は目を瞑る。 刀を取り出し范彊のいい感じに蓄えた髭を切り取る、そしてそのまま奴の血で 髭を貼り付けた。 うん、もう元の顔すらわからないな。 「この顔がもともとだったってことで・・・あと自分の偽名も考えておけよな」 そう言って、奴は俺達一行と一緒に行動する事となった。 いくらかしないうちに大慶関の関所が見えてくる。 此処を通れば追っ手から逃れる事が出来る。 しかし、やはり知らせが来ているのか、念入りに守衛の取調べを受けた。 案の定、大旦那は金を幾らか掴ませ、塩の件をもみ消す。 俺達は恙無く取調べを終わらせる、最後に残ったのは奴だった。 守衛は奴に問う。役人風の威張った態度で。 「おい!其処の者!姓はなんと言う!」 顔がボコボコで赤くなり髭をくっつけている奴。 そうそうばれることはないと思うが・・・。 目線を泳がせてる、・・・ばれるか? 「姓は関だ」 幾許かの間の後答える。 おい!偽名考えておけって言っただろ。 矢継ぎ早に問われる。 「名はなんと言う!」 遠くで雁の声がする。 心臓に悪いな・・・ばれたらどうしよう俺も罪人になるのか? 「姓は関、名は羽、字は雲長」 ふいと、奴はそう言った。 俺は、奴がばれないか内心焦っていたので、聞き流してしまった。 関羽雲長か・・・よし、偽名でてきたじゃん ・・・・・ん?良く聞いた名前だな・・・・ あれ・・・? 「益徳。益徳・・・彼今、関羽雲長っていったよね?」 こそこそと耳打ち。 「ああ・・・言ったな」 「やったね、是で3人そろったよ」 玄が俺を肘でつつく。・・・どうやら彼が関羽その人らしい。 ボコボコに殴っちゃったけど平気かな。兄者になる人なのに・・・・ 戻 TOP 次 |