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■□ 三国一 25 □■ 「歯食いしばれ・・・・」 ドスの効いたその声と共に俺は力の限り拳を振る。 鈍い音の後・・・・奉先の身体が吹き飛び・・・壁にぶち当たる。 棚の物が落ち・・・・壊れる・・・・。 「・・・・・」 奴は口の端から伝う血を拭う・・・・・始終無言の儘だった。 目すらも会わせない様に・・・・俯いたままだ・・・。 俺はため息を一つ吐き・・・・寝台に腰をかける・・・・ 奴を真っ直ぐに見ながら・・・・。 「・・・・何故こんな事をしたんだ?」 其れだけを問う。 ・・・・ってか、被害者は俺だよな? なのに何故俺が悪者みたいになってるんだ? 未だに鈍痛と独特の気だるさが身体を支配していた・・・・ 俺は髪をかき上げながら・・・ 「・・・・一緒に戦える・・・気の会う奴だと思ってたのに・・・・」 その言葉が漏れた・・・・その時 それは・・・・急で・・・ ボソリと耳に音が聞こえた・・・・其れは下手をすると聴き逃してしまうような、 小さな声だった。 「・・・はぁ?」 再度その声を聞こうと耳をすます・・・・ 其れが再び奉先の口から発せられる。 躊躇いがちに・・・・。 聞こえた言葉・・・・。 その台詞に・・・ 愕然とする・・・・。 何を求めていたわけじゃないが・・・・ 俺としては遊び、怖いもの見たさ・・・その類の軽い物かと思っていたのに。 質の悪い笑みでそう言えば良かったのだ・・・ 遊びだったと・・・・どんな物なのか知りたいだけの・・・ なのに・・・・奴は・・・ 『愛しているんだ・・・』と・・・・そうのたまうのだ・・・ 唯それだけの台詞が・・・・・・俺には重くて・・・・ 立ち尽くしたのだった。 静寂がこの場を包む・・・・。 もう既に日差しは高く・・・部屋の中に注いでいた。 遠くで鳶の音が聞こえている・・・。 ふと・・・俺は奴を見る・・・・。 何時もは寡黙な偉丈夫の男が・・・・。 この国に呂布在りとまで言われる男が・・・。 借りてきた猫宛らに目をソワソワとさせ・・・・・肩を縮込ませていて・・・。 その光景が何とも滑稽で っぷ!・・・・ 吹き出す・・・。 何故か・・・・俺は笑ってしまって・・・・ 当然、奉先は目を丸くして驚き俺を見る。 「ぷぷぷっ!!・・・・嗚呼解ったよ・・・・で・・・奉先が俺を愛しているのは解ったよ・・・で?それでこんな事したのか?」 俺は涙目になりながら・・・・答えてやる・・・。 「・・・・怒らないのか?」 「嗚呼?まぁ・・・・怒っちゃいるがな・・・・お前のその狼狽ぶりを見たら・・・何だか・・・小さなことに思えたよ」 それに・・・・俺も玄徳の事は好きなのだ・・・・人の事を如何こう言える立場じゃないよな・・・・。 「真面目なんだ・・・・もし益徳さえ許してもらえるのなら・・・・妻と子には悪いが・・・」 「あー、ストップ・・・」 俺は慌ててその先を止める。 「相手は男なんだぞ?自分で言うのもなんだが・・・・その・・・其れは責任とか取るもんじゃない・・・ 俺は大丈夫だよ、奥さんと餓鬼は大事にしなきゃ・・・」 そう言い・・・俺は奴の肩をポンと叩いてやる・・・・。 目は未だ何か言いたそうだったが・・・其れに気づかない振りをする。 「俺も親友と呼べるほど好きなんだよ・・・・お前を・・・」 瞬間・・・・力強い腕が俺を締め付ける・・・・。 何すんだ・・・そう言おうとした時・・・・ 耳元で呟かれる・・・・。 「愛してる・・・」 その言葉は俺の心には甘酸っぱくて・・・・何だか泣きそうになる。 溜息一つ・・・・嗚呼、負けたよ・・・負けだ。 目を瞑り・・・そう思う。 キッと奴を睨む・・・。 奴の体が震えるのが解る・・・。 其の儘・・・・・襟首を掴み・・・。 口を重ねてやる・・・・。 深く・・・・。 驚きで見開かれる目・・・・。 構わずに其れを繰り返してやる・・・・。 漸く長い口付けを終わらせてやる・・・・。 「・・・・俺の負けだ・・・・俺をお前にくれてやるよ・・・・」 「・・・・すまない・・」 俺の髪に顔を埋めた奴、言葉が俺に響く。 苦笑いをして答えてやる・・・・。 「俺より強く在ってくれ・・・・好敵手として・・・・それが条件だ、その為なら俺の体を差し出そう」 「・・・・嗚呼」 苦しそうに・・・・そう帰ってくる。 そして存在を確かめるように・・・両の腕が俺を掻き抱く。 「薫卓の件が一段落したら・・・・俺の処に来いよ・・・・、そうすればずっと一緒に好敵手として隣に居れるだろ?」 奴は微笑むと穏やかに頷いたのだった。 何時もこの身に在った・・・飢餓感。 其れが癒える・・・・・彼を抱いて気づいてしまったのだ。 太陽の様な彼を抱いてみて・・・俺は虜になった、 他の奴になど渡さない・・・・独占欲。 出来ることなら他の者の目に晒すことなく・・・・囲いたい衝動。 そうしたい衝動を押しとどめる・・・・・。 彼は俺を許し・・・・受け入れてくれた・・・・。 為らば、彼の望み通り・・・彼より強く在ろう・・・・・俺には其れが出来るのだから・・・。 虎狼の様な貪欲な欲望を受け入れて暮れるのだから・・・・。 質に取られた妻子には悪いが・・・・どちらを取るかと言われれば・・・俺は彼の手を取るだろう・・・。 躊躇い無く・・・。 戻 TOP |