【小説】

■□ 三国一 19 □■




丁原軍と対峙した、薫卓軍。

その中に盧植中郎将と俺は居た。

暇を見れば、呂布と訓練の日々・・・。

隙の無い、その動き。

手合わせしてお互いが伸びるのが良くわかる。

ずっとこうして居たかったのだが、薫卓軍の相手もある・・・。

呂布の戦いは凄まじく、日々連勝を重ねていた。

俺も、一兵卒としてコッソリ入れてもらってたが・・・。

意外な事に、呂布の獲物は方天戟では無かった・・・。

「いや、強いな」

笑顔で汗を拭く。呂布。

「いや、其れは呂布殿の方ですよ!俺もこんなに愉しいのは久し振りだ」

ウキウキと答える俺。

「あ、あの是良ければ・・・・使ってみてくれないか?」

渡したのは、方天戟。簡ヨウに俺がコッソリ作ってもらっていたもの。

俺には使い心地がピッタリと来なかったのだ。

「是は!?この様な業物を私に・・・・良いのですか?」

「嫌、何、俺にはしっくりとこなくてな、貴殿なら使いこなせると思って・・・」

俺だって知ってる、呂布の方天戟・・・・。

うぅ・・・、男に贈り物って・・・・。でも使ってるところ見てみたい・・・・。

手に取り、演舞。

見惚れる・・・・。偉丈夫。

鳴る、方天戟。

遣り合いたい・・・・。

その演舞に合わせ、俺も動く・・・・・・・。

鳴り、交じる、合さる方天戟と蛇矛。

時が止まればいいのに・・・・。

「いやぁ・・・・、副眼じゃ副眼じゃ・・・・」

丁原刺使が手を叩いて入ってくる。

「義父上・・・・」

「丁原刺使・・・」

照れ隠しに笑う俺と呂布。

「使いこなしてるようだし、其れ受け取ってくれないか?俺には蛇矛もあるし。浮気をしたらこいつが怒る。」

こいつとは蛇矛だ。

「有難い。何て礼を言えば・・・」

「嫌、俺との稽古の駄賃みたいなものと思ってくれ、あ・・・あの・・・・・若し・・・・・良ければ・・・・」

モジモジする俺。蛇矛の柄を弄る・・・。

「何だ?何でも言ってくれ」

「・・・・奉先って呼んでいいか?」

うわぁ・・・・俺恥ずかしい・・・!

然し、笑顔で返される。

「勿論だ、俺も益徳と呼ばせて貰おう」

呂布・・・・真面目でイイヤツってのが俺の認識だ。

その上強い。

笑顔の呂布と丁原刺使を見ながらそう思ったのだ。




何時もどおり、俺は呂布の処にヒョッコリと行った。

もう、慣れた物でズカズカと上がりこむ。

ん・・・・誰かと話をしているようだ・・・・。

然し、俺に気づいたのか其れは終わってしまう。

「あ、わりぃ・・・人居たな・・・」

俺は、戻ろうとする。

「・・・否。もう終わった・・・・」

呂布の何時もの笑顔が消え、顔が青ざめていた。

何かあったのか・・・?

「・・・・大丈夫か?何かあったのか?」

気が気じゃない・・・・尋常じゃないぞ。

「・・・・誰にも言わないで暮れるか?・・・・」

真剣な眼差し。

俺も其れが重要な話と理解する。

「嗚呼、勿論だ、死んでもも口に出さないで置こう」

真剣な顔で返す。

「・・・・・実は・・・・妻と子が、・・・・・・人質に・・・」

何?・・・・何故?

ふと、浮かんだのは薫卓の顔。

其れを潰す様に、壁に拳を入れる。

「くそっ!」

「俺に、義父上を裏切れと・・・・言ってきた・・・・」

外で馬が嘶く。
ふと其方を見る・・・・・・一見して解る良馬。

「・・・俺が良馬で眼を眩ませ、義父を裏切ったと見せたいのだろう・・・置いていったわ」

苦々しげに、眼を歪ませる。

「・・・行くのか?」

もっと、戦いたかった・・・・。

「・・・・・」

無言で、頷く。

手に持ったのは方天戟・・・・・・。

重い腰を上げ、部屋を出て行った・・・・・・・。




「義父上・・・・・・」

呂布は義父の居る部屋にゆっくりと入った。

何時もの定位置の机に座る彼。

丁原刺使は書類に目を通していた。

「・・・薫卓の使いの者が来たらしいな・・・」

丁原刺使は、背を向けながら穏やかに言った。

「はい・・・・・・」

「何、この老人一人の首で、若い二人が助かるのならば・・・」

慰められるように、紡がれる言葉。

知っていたのか・・・・苦しみで目を塞ぐ。

「悪いが使いの者はヘイ州に送った、薫卓に下るがいい、妻子の無事を確認するまで・・・」

義父の優しさが身に染みる・・・・・。

血を吐くように振り下ろす、少しでも痛みの無いように・・・

首を抱きかかえ、啼く猛者が一人。






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