【小説】

■□ 三国一 18 □■




閑散としてしまった宴は終わりを告げた。

呼び寄せておいた50騎を従え、俺は盧植中郎将を護衛しながら出て行く。

先ほどの宴を反映するかのように、出ていた月は雲に隠れてしまっていた。

相手の顔すら見えない・・・・月の無い夜。

是ほど、闇討ちに最適な夜は無いだろう・・・・・。

あの薫卓の事だ、必ずといって良いほど何かしてくるはずだ。

そう思いながら、夜道を歩いたときだった。

闇の中を駆けるヒュン!と言う唸り声

無意識に其れを受ける。

響く金属音、飛び散る火花。

馬を合わせ獲物が打ち鳴る。

やはり来たか・・・・そう思いながら体制を整える。

夜目が余り効かないが、気配で並の腕じゃないとわかるそれ・・・

俺は相棒の蛇矛を握り直し、再度応戦する。

薫卓の巨漢で緩慢とした常の動きを微塵も感じさせない鋭い切り替えし。

こいつは、面白い・・・・・・・・湧き上がってくる笑みを隠さずそう思う。

何十合と裂くように打つ、凌がれ、撥ねられ、突き返される。

雲長より強いそう感じる・・・・・最近では俺は彼よりも強くなっていた。

といっても、10回遣り合って勝ち4回に、引き分け6回程度だが。

愉しい・・・・・・・・。舌なめずりをして打ち合う・・・・。

配下50騎に先生を守らせ。

打ち合う。

喜ぶように鳴る蛇矛。火花が散った。

打ち、突き、閃かせる。

案の定、全て防がれる。

わくわくしながら技を出し合う・・・。

是はどうだ!

俺は深く構え、息を整える・・・・そして、力を込め必殺の一撃を放つ。

キィンと一段と大きい金属音。

チィ!是もか!

本来ならば・・・・絶体絶命の筈なのに・・・・浮かぶのは笑みで・・・

そんな時だった。

ふと、雲が流れ・・・・・、月がその情景を写す。

冴え冴えとした光が照らし出す・・・・全てを。

無心で打ち鳴らしていた俺が呆気に取られる。

向こうも同じようだった、呆気に取られた顔が向かう。

あれ・・・・太ってない。

薫卓と思ったそいつは、先ほど丁原を守った男だった。

男らしい顔立ちに、鋭い目が光る、引き締められた口、凛とした偉丈夫だ。

咄嗟に、先生が止めに入る。

「何やら、双方、闇夜に紛れた敵と間違えた様子、して貴殿は丁原殿の配下の者のように見るが?」

「ヘイ州が刺使、丁原が養子の呂布字を奉先と申すもの」

向こうもハッと我に帰り返す。

「あ、夜目が効かなかったとはいえ、すまん。敵かとおもってな」

俺は素直に謝る

「あ、いや。此方とて、闇夜に紛れ顔が見えないと言え、大変失礼な事をした」

厳格そうな老人な養子だけはある。丁寧な礼だった。

此の侭で終わりたく無い相手。

その思いが自然と口に出てしまった。

「若し、良ければ今度、稽古を付けて貰えんだろうか?」

相当恥ずかしい事をやったんだろう・・・

俺は、言い訳の様に頭を掻きながら呟く。

「ほら・・・その・・・お前の強さを見て・・・又遣り合いたいと思ってな・・・・」

目を見開き、次の瞬間・・・・微笑まれる。

「いや貴殿も相当なモノ・・・、此方からもお願いする」

そう言い、手を出される。

「社交辞令では無いぞ、必ず行くからな」

念を押す。ウキウキとする俺。

「嗚呼、義父には俺が言って置こう」

笑顔で返してくる奴に矢継ぎ早に聞いていく・・・

「なぁ・・・・最後の一撃・・・・アレを良く止めれたな・・・・アレは今まで一人にしか止められて無い」

一人とは勿論雲長だ。

「嫌・・・正直、俺もアレには驚いた・・・・あの速さ、一瞬ヒヤリとしたな・・・・」

「あの腕はどうやって鍛錬したんだ?一撃の重さと言い・・・受けて腕が痺れたぞ?」

「何、俺の獲物は他より多少重りを仕込んで重く出来ている・・・持ってみるか?」

「お!すまない!俺の蛇矛も持ってみるか?是も意外と重く出来てるのだが・・・」

俺は其れを渡される・・・本当だ・・・俺のより幾分重い。

奴は俺の蛇矛を持って其の造りを眺めていた。

「是は・・・相当の業物だろう・・・扱いやすい上に、切れ味も・・・」

そう言いながら一振りする・・・・・

ヒュンと音を立て・・・目の前に落ちて来た葉を切る・・・・・

ひらりひらりと揺れていた其れは音の瞬間・・・二枚に離れていく・・・・

「すこぶる良い・・・・驚いたな・・・本当に是が出来るとは・・・」

「知り合いに腕の良い職人が居てな・・・何、お前の腕がいいのも有るぞ?」

「嫌・・・俺の獲物は粉砕する事は出来るが・・・この様にする事はできん」

惚れ惚れと俺の蛇矛を見る・・・・

俺も奴の獲物を使い同じ様にやってみる・・・・成るほど・・・文字通り落葉は粉砕され・・・

散り散りになって舞ってしまう・・・。

「お二人とも・・・積もる話もあるかと思うが・・・・今は丁原刺使を迎えにいくのが先決であろう」

俺達二人の話を微笑みながら見ていた盧植中郎将は咳を一つして言う。

「あ!すまない!」

俺はあわてて奴の獲物を返す。

「此方こそ・・・つい・・・」

奴も頭を掻きながら・・・蛇矛を返す・・。

俺達は来た道を急いで戻る。

門の内では息子を待っていた丁原刺使がいた。

戻りの遅い息子を心配していたらしく・・・此方気付くと、安堵の笑みを漏らす。

「いや闇夜で敵と間違えてしまって、息子殿と私の部下がやりあってしまいましてな・・・面目ない」

盧植中郎将は非礼を詫びる。

俺も其れに追随するように謝る。

「本当にすいませんでした」

「いやいや・・・聞けば息子の方から手を出してきた様子・・・此方の方に非がありましょう」

そう微笑みながら息子を見る

「嫌・・・面目ありませぬ」

奴は本当にすまなそうだ。

互いが謝る事から始まった会話は次第に熱を帯びていって・・・・。

丁原刺使と盧植中郎将は気が合うらしく熱く政治について話していた。

其れに対なすように俺と呂布は武芸について言葉を交し合う。

夜も深いので、後ろ髪を引かれる思いで、馬首を屋敷へと向けた。





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