【小説】

■□ 三国一 15 □■




決して慣れる事の無い漢文と睨めっこをしている、そんな時だった。

皇帝の崩御が大陸を震撼させる。

重なるように新帝の即位が発せられる。弁皇子が立つ、其れは強引に。

微笑む者、青ざめる者、悲しむ者、其れは三者三様。

然し、嵐は避けられない様だ。俄かに天に暗雲が立ち込める気がした。

最近、盧植中郎将の動きが慌しい。

身辺警護の任を言われてる俺は彼に付き走り回る。

大将軍何進の屋敷や他の有力者の屋敷、朝廷。

ある日暗雲は見える物と成る。

薫卓が城外で兵を率いてきたのだ。

「何進大将軍が、弁皇子を帝とし、強引に擁立させ、援護を求めるため、諸国の群雄を、この首都に呼んでしまったのだよ

こうなっては乱は大きくなるばかり・・・」

苦虫を噛む彼。

「それも一番に着いたのは、腹に一物を持つ薫卓・・・・目も当てられん」

「先生、俺が居る。この命に代えても守る、玄徳にも約束したからな。

これからは俺は何処にでも付いていくよ、そのほうが安全だ」

蛇矛を持ち立ち上がる、頭や口では彼に負けるかもしれないが。

魔除け代わりにはなると思うから・・・。

在る時、何進大将軍の家で、名立たる将が顔を付き並べああでもないこうでもないと押し問答をしていたときだった。

何進の妹でもあり、帝を産んだ何太后から、兄を呼ぶ命が下り、何進大将軍は朝廷に赴いたはずだった・・・・・・・。

部屋に大将軍の従者が泣き叫びながら入ってくる。

黒い丸い物を胸に抱えて・・・・其れは、大将軍の頭だった。

今都では崩御された霊帝の後目を巡り、何太后の子弁皇子、今は亡き王美人の子陸皇子。

どちらを擁立するかで醜い争いが朝廷で起きていたのだ。

片や、十常侍、後宮に仕えし去勢が施された官吏、宦官の頭目で、

亡霊帝に寵愛され、絶大な権勢を振るい、至る所で人民を貪欲に搾取したこの悪政の癌。

彼らは陸皇子を。

そして何進大将軍は当然、自身の妹の産んだ弁皇子を。

「何たること!」

何進大将軍の一派、袁紹が叫ぶ。

「こうなったら・・・」

大将軍の部下共が慟哭する。

それらは武器を手に立ち上がる。

「張飛!このままではいかん!我々も急ぐぞ!」

先生と俺は獲物を片手に走る、怒りの炎が立ち上がる朝廷へ。

鞭を討ち、死に物狂いで走る馬。

北宮の門に着くと数人の人が叫びが聞こえる。

兵達は虐殺を始めているようだ。




其処には馬車に乗り込もうとする貴人が数名。

しかし、俺達を見ると、中に居たものが振り落とし、

其の儘、馬車を走らせる。

すれ違い様だった。

「張飛!彼らから帝を取り戻せ!!此方は何太后を守る!」

「おう!後は先生頼んだ!」

轡を引き馬首をひるがえす。

泡を吹く馬に又泡を吹かせ馬車を追う。

街を抜け、平原を駆ける。

チィ!馬が疲れてる!

目を剥く相棒に叱責をする、頼む後で塩とご馳走をやるから!

届きそうで届かない・・・・・・・・。

焦る、もう可也遠くまで走った。

それは一瞬の出来事。

小石で撥ねる車。

面白いように斜めに傾く其れ。

やばい!

咄嗟に身を投げ出す。

破壊音と痛み。

殺すのはあんなにも簡単なのに・・・2人助けるだけで是か・・・。

腕には2人の子。背を打ち降りかかる車から身を挺す。

熱い・・・全身が・・・。

ゆっくりと、顔を上げて恐る恐る見てみる。

車が背に寄りかかっていた。

傷を抑え、立ち上がる俺。

腕の中では、

泣きじゃくる子と其れを確りと抱える子。

俺は獲物を握る。

「おい、目をつぶっておけ・・・」

泣きじゃくる子の目を塞ぐ・・・もう一人の子。

「自分のもだ」

舌打ちして言う。

「否、予はこの終焉を見届ける」

確と真っ直ぐに見据えられる。

「好きにしろ」

俺は車に近づく。

ゆっくり、一歩一歩。

静かだ。然し、中には確かに気配が有る。

細心の注意を払い中を伺う。

其処には小柄で太った婆のような男が居た、2人。

「ひぃいいい!助けてくれ!金なら幾らでもやる!」

平伏し涙ながらに訴える。

「スマンな・・・それは甘美なお誘いだが、・・・・平和はプライスレスなんだよ」

言ってところで解らないだろうが・・・

其の儘、閃く蛇矛。

首を切るためのものではないが出来ないことはない。

撥ね、弧を描く、2つ。

嘘のように吹き出る赤。

其れを浴びた俺は宛ら鬼。

怖がらせてしまうな・・・そう、ふと思う。

振り返るとじっとみつめている・・・一人。

もう一人の目を押え。

赤い顔を袖で拭い、膝を折る。

「良くやった。其の者名はなんと言う」

「俺は、盧植中郎将の私軍、劉備軍配下が一人張飛字を益徳と申すもの」

「そうか・・・盧植の・・・良い兵をもったものじゃ」

「さぁ、戻りましょう皆が貴方達を待っている」

泣く子と前を見据える子を小脇に抱え、馬に乗せる。

「すいません。車は血だらけなんで・・・・・・是で」

まぁ、血だらけでないにしろ、壊れていたので乗れなかったが。

そうして、2人を乗せた相棒の首を撫でてやる。

塩と今日は特別に甘いもの食わせてやるからな。

意味が解ってるのか、相棒は嬉しげに一つ大きく嘶いた。






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