【小説】

■□ 三国一 10 □■




広宗近く、遠くから鳴る銅鑼の音。

其の音を不思議に思った益徳が俺に指示をする。

「益徳すまないが様子を見てきてはくれないか?」

俺も気になったので二つ返事で答え・・・・近くに物見が出来そうな箇所を探す。

手頃な高台に上り其処を見ると官軍が乱れ動いているのが見て取れた、

其処を黄巾賊が突かれ、兵に混乱が広がっている様だ。

「何やら黄巾賊に虚を突かれ・・・兵に混乱生じてる用だ!」

俺は急いで戻り・・・叫び報告する・・・。

その報告を聞いて、玄徳は馬首を翻し叫んだ。

「雲長・益徳!加勢に行こう!!」

俺達は待ってましたと叫ぶ。

「おう!」

俺達は官軍が乱れている箇所に雪崩れ込む。

「殺されたい奴は出て来い!俺は翼人張飛なり!」

俺は吼えながら手近の敵の腹を刺す。

「関羽とは我の事、死にたい者は前へでよ!」

隣では雲長が叫び・・・首を飛ばす。

俺達は少数で固まり・・・乱れ、突かれた箇所を駆け回り、混乱の上に黄巾賊の混乱を誘う。

相手はまさか、大群の中を小数隊が駆け回っているとは思いもつかないのだろう。

縦横無尽に駆け、黄色目掛けて獲物が襲う。

この陽動作戦が上手く行き、数時間後には、兵が持ち返し押し返す。

然し、官軍は相当の損害が出ていたらしく・・・見るも無残だった。

其れを見た玄徳は、小さく呟く・・・

「可笑しい、盧植中郎将ならこの様な事はしないぞ」

其れは盧植中郎将を知っていた皆が思っていた事だった。

三人で顔を見合わせ、もしや、と思い本陣に走る。

盧植中郎将の身に何かあったのでは?

其の考えが皆の頭の端で警笛を鳴らす。

急いで陣中の彼が居た部屋を探す。

部屋の中、盧植中郎将は居た。

俺達はそれを見て張り詰めていた気を吐く・・・・。

よかった・・・・彼は無事だ。

彼は我々の気も知らず・・・穏やかな口調だった。

「玄徳ではないか向こうで功績を挙げたと聞いたぞ。良くやったじゃないか」

それを見て一安心する。

然し、心持か余り顔色が良くない。

其れを目ざとく見つけたのか・・・

「どうかされたのですか?」

と玄徳が聞く。

彼は、その問いに苦笑いを漏らす。

「嫌、何てことはない。あの後直ぐ視察来てな、君が渡してくれた物を少し、使ってしまった・・・・すまない」

其の答えに安堵をする俺達。

どうやら大した事ではないようだ。

「いえ、使うべきときに使ってもらえましたよ」

そう言うと、玄徳は笑みを漏らす。

「そうか・・・・嫌、面目ない・・・」

そう言い頭をかく盧植中郎将。

暫し、穏やかな空気が流れていた・・・。

然し、急に現れた無粋な人間が場を壊す。

「何だ今日のあれは!全く動きがなっておらん!!」

狭い室内に、耳障りなだみ声が響いた。

眉根を寄せ・・・俺達は其方に顔を向ける。

達磨のように横にも縦にも大きい男が居た。

盧植中郎将は苦笑いをして居た。

「嗚呼、失礼今部下と話していましてな・・・これ劉備挨拶をせぬか」

居住まいを正し、盧植中郎将が言う。

彼の手前も考えてか、玄徳はにこやかに言う

「私、義勇の軍からこの度、盧植中郎将の私兵となりました、劉備玄徳でございます、

この2人は部下の関羽に張飛です」

三人は膝を突き礼をする。

目上の者にする最上の礼である。

ふんっ!

奴は其れを鼻で笑う。

其の音を聞き俺がピクリと動こうとする・・・・

何て失礼な奴なんだ・・・・。

然し、玄徳と雲長が目で懸命に静止する・・・・

今は黙ってこの場を切り抜けろ・・・・そう言っていた。

俺は不穏な空気を身にまといながらも堪えていた。

其れに気付いたのか・・・

「其れより、今日の様に、足並みが崩れる事の無い様にお願いしますぞ!」

といい、逃げる様に出て行ってしまう。

俺達は漸く身を起こす。

盧植中郎将は溜息をつく。

「この様な訳だ、一向に、睨み合いの状況が続いていてる事を視察の者が朝廷に報告してしまったらしくてな、援軍として薫卓が来たのだよ。

そして当然、その足並みが揃う筈などない・・・・・結果が今日のような始末だ」

薫卓・・・その後の遺恨を残さないためにも斬るか・・・・

そう、思ったとき。

玄徳は言う。

「先生、朱シュンの方も一段落しましたし。傘下で働かせていただきます」

其の言葉に盧植中郎将の疲れた顔が幾分明るくなる。

「そうか!君達のような猛者が来てくれたなら、私も心強い。お願いしよう」

そして玄徳の肩をポンと叩く。

釣られるように玄徳も笑っていた。

蛇行する歴史が悠然と、然し確実にずれ始めていた。




その後、盧植・薫卓の軍に皇嵩甫軍が加勢に入り、黄巾賊の張角率いる軍と戦っていた。

煌く矛、雄叫び、舞う鮮血。

やはり、盧植中郎将が居るお陰なのか、負け無しで4戦を勝利で飾ってた。

俺達も、其の中で水を得た魚の様に動き、今では官軍の中では一目を置かれるまでに成っていた。

そんなときだった、別の黄巾賊張角の弟2人を相手していた朱シュンから緊急の援軍要請が来る。

其の件を如何するか、取り急ぎ、軍会議が行われた。

「我らとてそのような要請、避ける人数は居らんぞ」

と薫卓・皇嵩甫の両者が口をそろえる・・・

なんて奴らだ、自分達はお山の大将でろくな働きをしないくせに・・・

溜息一つ、盧植中郎将が俺達に向く。

「すまないが、他に使える手勢が居ない。行ってきてはもらえないだろうか?」

動けるのは元々この軍では無い俺達しか居なかった。

其の要望を玄徳は笑みを絶やさずに返していた。

「もちろん、早速参りましょう」

その言葉に、俺は一気に重い物が乗っかってくる・・・・疲れだろうか・・・

見ると雲長も同じようで、溜息一つ零していた・・・・

其の瞬間目が合ってしまう・・・・苦笑いを互いに交わす。

某居酒屋になった気分・・・

俺は天井を見上げて再度溜息を吐く。

義軍は流浪の民になったようだ・・・・





TOP 次  
inserted by FC2 system