【小説】

■□ 三国一 1 □■




俺の生まれは、横浜の関内から徒歩15分のところにある中華街という有名な観光地。

俺、川本益臣16歳は、その中のにある一軒の小さな乾物屋の子だ。

ヤンキーでここいらでは恐れられている俺だが、向こうが勝手に仕掛けてくるだけであって

俺自体は、ちょっと素行の悪い普通の高校生だと思っている。

日本人の親爺と、台湾人を父にもった母。

母は俺が小学校4年の時に肺炎が悪化しぽっくりと逝ってしまった。

「じいちゃん、いってきます!」

俺は店の方に居るであろうじいちゃんに向かって言う。

「ああ、気をつけてな」

其の声が帰ってくる・・・

俺は、爺ちゃんと2人で暮らしていた。

玄関を出ると、何時もの見知った顔があった。

斜め向かいの古物屋の息子、安田玄は俺の昔からの親友だ。

「よぉ!」

俺は玄に向かって手を上げて挨拶する。

背後から玄の婆ちゃんが呼びかける。

「関聖帝君にお参りちゃんとして御行きよ!」

「ぁーい」

其れに二人は生返事で答える。

関聖帝君とは近所にある関帝廟、まぁ神様だ。

日課的にやらされる朝の参拝・・・・・・。

俺達は、目的地に着くと急勾配な階段を駆け上り、その中国独特の色彩に飾られた豪華な廟に向かって、

俺は、膝をついて目を瞑って合掌する・・・・・

玄と結ばれますように・・・・・・

そんな淡い願い事。

そう、俺は玄の事が好きだったのだ。秘めたる思い・・・・

実は、朝のお参りも玄と一緒に少しでも居たい為の口実である。

実らない恋と解ってるのに・・・・・

玄にはそう言う浮いた話が出てきた試しが無い・・・

「世界征服」を当の本人は願っているのだろう・・・・

小学校の時から其の願いは変わっていないようだ。

玄、某拉致国のトップにのようにならないようにな・・・・

そんなことを思いながら、俺は学校へ向かおうと廟の階段を降りていた時だった、

「うわー!」

と頭上から声がする、振り返ると其処には、足を踏み外した玄が俺に向かってダイブしていた。

げ!?

影がどんどん近づいてくる・・・スローモーションで・・・

鈍い音をたてて俺の体は落っこちた。

「いてててて・・・玄・・・・足元ちゃんとみろよ!」

可也強く打ったらしく背中が痛い。玄の下敷きになっていた。

身長180cmある俺だが173cmの玄はやはり重かった。

俺は背中を摩りながら玄を起こす。

ふと気づく。足元に有るべきアスファルトは無く、其処には草が生えていた。

見回しても、廟も階段もない、其処は森のようだった。

突然のことでその儘呆然としていると、悲鳴が聞こえる。

「うぁああ!誰か助けてくれ!!」

其れは助けを呼ぶ声で・・・喧嘩上等な俺は、

咄嗟に俺は声の有るほうを目掛け無心で走った。

森を抜けると其処は草原、叫んだ人物を見つけ・・・思わず、時が止まる・・・其処には玄にそっくりな男が居たのだから。

其の男は崖を背に息も絶え絶え逃げていた。

一方追っている方は厳つい体格の男で、鬼の様な形相をしていて・・今にも襲う、そんな感じであった。

咄嗟に、地面に落ちていた石を拾い俺は、そいつに向かって投げつける。

勢い良く投げた其れは男の鼻面に当たり、男は呻いた。

俺は駆け寄り、男に声を掛ける。

「おい、大丈夫か?逃げろ!」

呻いていた男は起き上がり、薙刀の様なものを振りかざす。

俺は咄嗟に、逃げていた奴が落としたと思われる、剣を拾い一閃する・・・・・・・・相手の腕から流れる血。

其れを見て相手は怒りを露にして・・・

「うがあああああああ!くそ!お前!!!俺を燕人張飛と知ってか!?」

だみ声が響く。

俺には誰だろうが構うほどの余裕は無かった。

「黙れ!」そう叫び返してやる。

後から付いて来たのだろう玄が後から来る。

「益っち!」

其の叫びを聞きながら、俺は流れるように飛んでくる薙刀をかわし、いなす。

懐に飛び込み、俺は大男に止めの一撃。

腹に刺さる剣・・・それに驚き・・・震える・・・相手。

そいつはズドゥンと大きな音を立て倒れ、絶命した。

助けた男のほうをみると、玄がいて彼を介抱していた・・・。

こう見ると瓜二つである。

「益っち・・・・どうしよう・・・血が・・・」

男は脇腹から血をいっぱい流していた、そう長くは無い・・・

焦点の定まらない目を向け・・・血を口から流し言う。

「・・・・こ、これを・・・母に・・・」

彼は小さな袋を渡す、其の中には金と米のような物が入っていた。

「おい!名前は?」

俺は其れだけでも聞こうと揺さぶり・・・話しかける。

どんどんと・・・目の光が失われていく・・・・俺の答え掛けに・・・うわ言の様に返す。

「私は・・・幽州タク郡タク県の劉備と申す・・・・何卒、母に是を・・・・」

血を吐き彼は程なくして絶命した、しかし確かに男はそう言ったのだった・・・・・・・・・・。

・・・・はて、この名前・・・”リゥベイ”・・・・

・・・・・俺さっき”ジャンフェイ”ってやつ切ったし・・・・・・・

華族だから中国語は出来る・・・・・・・しかし・・・

「へええ、劉備に張飛・・・・三国志みたいだね」

彼はのほほんと死体を前に話す・・・・。

暢気に言ってる場合じゃないぞーーーーーーーーー!とすると俺達、三国志の時代に居るって事じゃないか!?

それも、主人公である劉備、張飛死んでるし!!

史実が正しければもっと後に死ぬはずの人間だぞ・・・・・・・・

俺、歴史変えちゃった???



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