【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 23 □■




そして次の日・・・雲一つない晴天が俺達の出陣を祝うかのようだった。

昨日のジジとの格闘のせいで完全に体力は回復していなかったが・・・

平原を銀の甲冑と真紅の旗が埋め尽くしていた。

総勢五万の兵。ファルジアの国の兵三万五千にアダラの国の兵一万五千・・・・

右翼軍団団長ヴィルと左翼軍団団長ガヴィの二将軍が両翼を指揮して・・・・。

前衛の軍を俺とその部下でもあり近衛兵隊長でもあるフィル・アズィーム通称フィルとで指揮する。

コイツは趣味と頭はアレだが、話してみると意外といい奴で・・・今では良き部下だった。

因みに、フィルの乗る馬のサイズが無いので・・・・コイツだけ徒歩だ。

元にしてもアダラの王だった奴なのにだ・・・・。

まぁ本人元気に走ってるし・・・・良いんだろう。

ふと・・・思い返し・・・奴に声を掛ける・・・。

「おい!フィル!お前猪に乗ってみる気無いか?」

話を持ちかけてみる・・・

「え!?乗れるんで?」

そう言い止まる・・・・。

「嗚呼、一寸待ってろ・・・土の王ベヒモス!姿を現せ!」

その答えに地響きが走る・・・・。

次の瞬間・・・・、猪の形をした岩が出現する・・・・。

「すまないがコイツを乗せてくれ」

そう言い・・・フィルを指差す。

「御意に」

そう言葉が返ってくる。

「え・・・・これって土の精霊王ベヒモスじゃ・・・」

たじろぐ・・・フィル

「嗚呼、気にするな・・・お前が走っていざ戦うときに体力消耗してたら・・・・話にならないからな・・・」

土の王ベヒモスはフィルの目の前まで歩き、乗れとばかりに頭を振る・・・

おずおずと乗る・・・やはり、岩の様なベヒモスに調度のサイズ・・・

その間にも、ジジが白馬に跨り・・・・兵に向かい叫ぶ。

「目指すはヴァルケン陥落!兵士諸君、我が国には神々の王アラカナが付いている・・・勝利は我らファルジアに!」

美しい飾りの剣は閃き・・・・・天を指し・・・・振り・・・降ろされる。

兵士の歓声が湧き上がり・・・・士気が上がるのがわかる。

流れるように進みだす・・・・・兵士達。

「おい!行くぞ!」

そう言いながら俺も走り出す・・・・

「あ・・・はい!」

フィルは初めての乗り心地にビクつきながら・・・返事をする・・・

六本足の黒馬の後に続き巨大な猪の岩も走り出す。

その異様な風景。

そして・・・三日後には国境近くの街に到着する。

ヴァルケンの軍は既に奴らは小高い丘に布陣していた・・・・

・・・さて・・・・どうするか・・・幕内で会議が始まる。

腹黒宰相はその布陣を見て・・・ニヤリとし、こう言い放ったのだった。

「予想通り・・・・やはり此処付近で布陣に最適な場所を選びましたね・・・」

俺は慌てる・・・・布陣に最適な場所って・・・其れって俺達に不利じゃねぇか!?

「おい・・・・それじゃ戦いが不利ってことじゃねえか!?」

そう問いかける・・・・

「然し・・・・両脇を渓谷に挟まれ、退路は後ろのみ・・・・

後ろから攻めれば・・・さぞや敵も慌てるでしょうね・・・」

奴は笑いながらそういったのだった。

然し地図にはどう考えても背後に回る道なんぞ無かった。渓谷は長く国境を連なっているのだから・・・。

「で?背後に行ける道はねえぞ?どうすんだよ・・・」

「ふ・・・在るではないですか・・・立派な道が・・・」

そう言い指を刺したのは・・・・どう考えても・・・渓谷を突っ切る川。

「おい・・・・そりゃ川だろうが・・・・それに此方が下流・・・・あっちのほうが上流じゃ船でも行けねえよ」

「そうですね・・・敵も恐らく我々を正面と川側から攻めてこようとするはず・・・そこで・・・貴方の出番なのですよ」

「へ?」

俺は素っ頓狂な声を発していたと思う。

「貴方に・・・・この川を凍らしてもらいたいのです・・・・人が通れるほどに・・・」

其処で流石の俺もピンと来る。

「水の精霊王を呼び出すのか・・・・」

「はい・・・・」

奴は人のいい笑みを貼り付け言う・・・・。

凍らせれば・・・・敵の船は此方に来ることも出来ない・・・。

俺はニヤリと笑う・・・・。

「分かった・・・・じゃあ俺は別働隊で背後から突く・・・・其れまで、敵を前方に意識を集中させておいてくれ・・・」

「分かりました・・・右翼軍団団長ヴィルトシュヴァイン将軍、左翼軍団団長ガヴィニエス・・・」

その声に右翼軍団団長ヴィルと左翼軍団団長ガヴィの二将軍が返事をする・・・

「敵に此方の作戦が気づかれない様に、相手をして下さい」

「御意に」

「応!」

そう言うとニヤリと笑ったのだった。

「作戦は早朝・・・・日の出迄には背後に突いて挟み込める様に・・・・」

「嗚呼・・・」

「では早朝に・・・・」

そう言うと・・・ヴィルとガヴィは俺の肩を叩く。

俺も奴らに笑い返し・・・・

「では以上」

という

会議が終わる・・・・。

残ったフィルと俺は宰相の支持を実行に移すために兵馬を用意させる。

「おい、フィル・・・行くぞ・・・」

俺は奴と一緒に行こうとする・・・

「はい!・・・・あ・・・ちょっと俺・・・先に兵士達に指示をしてくるんで・・・」

奴は背後に目をやると・・・・即ササと出て行ってしまう。

・・・・何だ?そう思いながら・・・振り返る・・・・。

其処にはジジが居た。

・・・アイツ・・・・要らない気なんて使うんじゃねぇよ・・・

溜息を吐き・・・俺は奴に向き直る・・・・。

「・・・何だ?何か用か?」と問いかける。

「こうたろー・・・怪我のない様にね・・・・」

そう言いながら抱きしめられる・・・・

「何だよ・・・・お前過保護だなぁ・・・」そう笑いながら答えてやる。

戦う前の・・・・験担ぎみたいなものだ・・・・。

俺は奴の頭をポンポンと軽く叩いてやる・・・。

首筋に掛かる息がくすぐったいが・・・・まぁ、向こうは心配してるんだ・・・落ち着かせる為にも、

少し此の儘にしてやるか・・・・

そう思いながら目を閉じて・・・奴の体温を感じて居た。

「・・・是くらいなら・・・良いかもな・・・」ふと・・・そう思う・・・。

独り言の様に言ったそれは奴には気になったらしく・・・問われる視線を投げかけられる。

苦笑いをして其れを返す・・・俺。

「嫌・・・・ほら・・・お前直ぐ抱こうとするじゃないか・・・・其れは御免だが・・・是くらいなら・・・ってな」

「・・・こうたろー・・・」そう言いながら奴の顔が俺の髪に埋まる・・・・。

一層キツク抱きしめられる・・・・

「よし!じゃ明日・・・またな!」

そう言いながら俺は強引に離れる・・・・。

柄じゃないんだよ・・・・湿気た空気は。

そう思いながら・・・・気付けに頬を二・三回叩きガッツポーズをとる

「よし!行くぞ」

そう言い・・・俺はフィルの後を追ったのだった。







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