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■□ 大鬼氏の憂鬱 21 □■ あれから一年が経っていた。 その後、俺のアダラの王の戴冠と、傭兵を編入し正規軍に鍛えなおした。 流石、あの腹黒宰相が言っていただけのものだった、傭兵の部隊は予想外に利用できる物で。 唯、統率が取れていなかっただけで・・・・其の弱点を克服した今の元アダラの軍は正規軍を凌ぐものだった。 夜鳴き、愚図り・・・等など。否応無しな餓鬼の面倒・・・・それも含まれていたが・・・。 一年の歳月で俺の後を付いて回るまでにはなっていた。 シトシトピッチャン、シトピッチャン・・・・・。 子連れ狼なそんな気分。 助かるのは俺が抱いてると驚くほど大人しいところだろうか・・・。 名前は・・・・大五郎・・・・。 と呼んでいる・・・俺は。 本当はヴァレリー・ファルジア・・・・と言うのだが・・・呼び辛いからな・・・。 一回其れで舌を噛んだ。自分の息子を呼ぶのに噛んでいては終わりである。 よって大五郎。俺の良く飲んでた酒の名前だ、有難く受け取れ。 天幕の中、真剣な面持ちで将軍達が顔を並べた作戦会議・・・・。 左右にヴィルとガヴィの軍団団長、俺の後ろには殺したと思ったフィル・アズィームが控える。 喉笛を噛み切られたのに生きていたのである・・・。 ちなみに・・・今は何故か近衛兵隊長をやっている。 そう、ファルジアのアラカナ兼、アダラの王になった俺は何故か背中に赤子を背負って参加していた。 宰相は中央の地図を出して指差す。 『此処が我々の国ファルジア。そして其の隣が、今回攻め落としたアダラ。 因みにこの中で強国はハーヘディス、ワルフィスの二つ。海洋国ヴァルケンも海上戦では此方には不利でしょう。 商業国エイゼルはその知略と豊富な資源そして兵器インクルシオが有り、神聖帝国ホントゥはアラカナが一人居ます』 ふと思う・・・あの長老はアラカナは俺を含めて5人・・・・・。 後の三人は何処に居る? 「後三人アラカナは居るはずなんだが・・・」 そう言って見る。 宰相は困ったように話す。 『其処なのですが、アラカナは国家機密なモノなので情報は有りませんが、 恐らく強国の、ハーヘディス、ワルフィス辺りには居るのではないでしょうか?』 ・・・俺の時は大々的に遣ったと思ったんだが・・・ 『我々は神聖帝国ホントゥと同じように、アラカナを表に出しその加護を受けた事を国の内外に示すことによって、 安定をもたらせてきた国なのです、ファルジアとホントゥのみは古くからアラカナが降臨した地なので・・・』 意外な話だった。 俺はテッキリ俺を含め五人は決まった国に降りるものだと思ってたから・・・。 と言うことは、他の三匹は大事なアラカナを国家機密にして大事に箱の中に仕舞われている訳か・・・・他の国から強奪されないように。 ・・・自由は無いんだろうな・・・・そう思いながら・・・拳を握る。 『小国はこの際、目を瞑ります。この五カ国相手に、大国とはいえファルジアが戦う・・・相当分が悪いのですが・・・』 そりゃそうだ・・・・一気に五カ国ではリンチに遭うだけだ。 『そこで、好都合な事に、ハーヘディス、ワルフィスが今戦を始めたので、其の間に海洋国ヴァルケンと戦います』 ・・・ほほう・・・船か・・・ 「ハーヘディス、ワルフィスは仲が悪いのか?」 素朴に思った疑問を投げかけてみる。 『ええ、昔、ハーヘディスのアラカナをワルフィスが強奪しまったのです、文献によるとハーヘディスの王とアラカナの間に子が居て その恨みが未だ子孫に伝わっているようです。然し、ワルフィスの子孫も其のアラカナの子孫なので・・・・』 「へー、兄弟喧嘩か」 一番始末に終えない・・・・其の問題のアラカナモテモテだな・・・なんて暢気な事を考える。 『その兄弟喧嘩を旨く利用して大きくなったのが商業国エイゼル。両国に武器を売り栄えたのがこの国です』 宰相が海洋国ヴァルケンの斜め下の国を指差す。 漁夫の利だな・・・・まぁ至極当然だが・・・。 『そして海洋国ヴァルケンを落としたら、あそこの国の軍艦を利用します。なので、軍艦は成るべくでしたら無傷で奪還をお願いします。 そしてフィウーメ大河を登り・・・商業国エイゼルへ』 繊細な指が河をなぞる・・・・一同其れを追う。 『王から聞きましたが・・・・恐らく最終的には王権を無くし、各州の考え方で統一する形になると思います。基本的に自治権は残します。 アラカナの奪還が優先です・・・然し・・・再度、降臨するなんて事は無いんですよね?』 その答え。宰相は俺をじっと見る、そして其の部屋に居たもの全員が・・・。 大五朗以外の全員が・・・・。 「嗚呼、一時的ではあるが・・降臨しない様・・・その門を破壊しているからな・・・」 そう、其れは一時的なもので・・・・こっちにある聖域を壊さなくてはならない・・・ それで漸く門が閉じる。 ブラキアの聖域は俺が壊した。 そう、あれは余り気分のいいものではなかった・・・。 ふと、あの時のことを思い出す・・・・其れはこの戦いが始まる少し前の事。 「・・・・おい、爺。此処で何するんだ?」 俺はブラキアの王宮の奥底にある庭園の様な所に居た。 先ほど貴方様の力で我々の国の門を壊されました』 「嗚呼、エクレールガニェで壊したな・・・・」 『あの神剣だから出来る事でございます、そして今から人間界のこの調停者の門を閉じます』 そういうと爺は庭園の最奥を目指す。 其処は、一歩踏み入れただけで景色が変わった。 桃源郷・・・・其れが一番近い表現だろう。 俺が降臨した所と似通った其処、天国と見間違った所だった。 『今から私の言う通りにお願いします』 「あ・・・嗚呼・・・」 『失礼・・・』 そう言うと、俺の持っていたエクレールガニェを取り、突立てる。 『・・・・・・煉獄の炎を召還してこの聖域を焦土として消し去ります・・・・考えられる手段は其れしかないので・・・』 苦しげに言う爺の気持ちは解る。 こんな桃源郷のようなきれいな世界を潰すのだから・・・。 其れは俺に耳打ちで伝えられる・・・。 意を決し俺は口を開く。 「精霊と神と人の古の盟約を結びし一人、神々の王黒きアラカナ、約束の地ブラキアの聖域を煉獄の炎で焼き尽くし 古の盟約の文字を消さん。我神々の王ネーロ・レ・ティグレ、兄弟、冥界の神プラティーヌの力をもって、煉獄の炎を呼ばん。」 次の瞬間、突立てた剣が黒い炎で消える・・・・・・一回だけ見た、あの炎・・・・。 其れは舐めるように広がっていく・・・・美しい世界は直ぐに地獄に変わる。 『さぁ、急ぎ出ましょう・・・』 剣を引き抜き、爺は元来た道を戻る。 其の空間を抜けたとき・・・・風船が割れた音がした・・・・。 後ろを見ると・・・・其処には壁・・・・。 ・・・・其の空間は確かに消滅したのだった。 「爺さん・・・俺があの古の盟約を結んだのか・・・?」 あの呪文の一文はそう歌っていた。 『・・・・貴方と言いましても・・・魂は同じでも、姿形、考えすら違うもの・・・ なので、貴方ではなく古の神々の王、黒きアラカナが結んだものでございますな』 そう言うと笑みを深めると、爺は言う。 『けれど、この盟約はやはり神々の王である黒きアラカナが結んだもので・・・消すことのできるのも・・・』 結んだのが昔の俺なら・・・・盟約を無にするのも俺・・・・・。 その言葉を思い出し、唇をかみ締める。 戻 TOP 次 |