【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 20 □■




痛みの中・・・・朦朧とする意識。

今、誰でも良いから噛み砕きたい・・・・・。

痛みを痛みで逃がす行為・・・・。

『コウタロー頑張って!大丈夫だから・・・・』

何が!?俺はこんなに痛いのに・・・・。

何を頑張れだ・・・・。

そう思う、辞めればいいのに腕が伸びてくる・・・・・・・。

俺は本能のまま口に銜える。

広がる血の匂いに少し楽になった気がする・・・・。

本当は、痛い己が腹を食いつきたかったが・・・。

流石に猫の侭では無理だ・・・。

『ニャア・・・・・・・』

噛んだ隙間から、細々と声が漏れる。

死にそうな声だ・・・・。

癌なんてもんは最後、腹水が溜まって、全身の激痛で死んでいくんだ・・・・・。

此処までの痛みと腹水・・・・。

俺だって解るぞ・・・。

もう終わりだよ・・・・・。

おぼろげに見える奴を見て微笑む。

はははは・・・・後は頼んだぜ・・・屁たれな御前を残していくのは・・・ちと・・・・気が引けるが・・・・。

『ちと、失礼・・・・』

ツカツカと入ってきた眼鏡を掛けたハゲの爺が俺の尻尾を持ち上げる。

痛みの上、予想外の事に焦る俺。

は?何してるんだ!?

『大丈夫、痛みの元を取るから・・・・』

とジジが話しかける・・・・。

何言ってるんだよ!癌を素手で取ろうってのか!?魔法か?!

暴れだす俺。

案の定ハゲの爺の頭をボールの様に蹴り飛ばす。

面白いように弧を描き落ちる其れ。

すかさず、屈強な男四人が登場四肢を押さえつけられる。

ハゲの爺の眼鏡破壊・・・・。

うわ・・・・、つぶらな瞳が・・・・・。

『大丈夫、大丈夫・・・』

とつぶらな瞳で話す・・・。

再度持ち上げられる尻尾・・・・。

片方の手が振り上げられていた・・・・。

入れるのか?其れを入れるのかアアアアアアアアァ?

この危機の中、俺の頭の中では・・・、

フィストファック・・・・・・そんな下世話な単語が浮かんでいた。

ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

声にならない声が響く・・・。

痛い何てもんじゃない、串刺しになった気分だ・・・・・。

タンドリーチキン・・・・・まさしく其れ・・・。

ハゲの爺は為れたもので腹を弄っている・・・・・。

其れが動くたびに痛みが湧き上がる。

そりゃぁ、痛みには他の痛みで消せるが・・・・・是は・・・是は酷すぎるだろ・・・・。

意識が段々と朦朧としてくる・・・・うぅ・・・・・。

すまん・・・・もう駄目だ・・・・。

『ああ、是だ是だ・・・・其れ!』

目当ての物を見つけたのか、つぶらな瞳を輝かせ・・・・。

其れを引っ張る。

ぐぁ・・・・・・・。

今内臓系を引っ張・・・・・ウがアアア!

あああああああああああああ!いいいいいいいいいいい!うううううううううううううう!

悶絶・・・・・・・・。

っふと・・・意識が軽く飛んだ・・・・。

次の瞬間、ずるりと引き出される其れ・・・・。

目の霞んだ俺は其のまま意識を飛ばした。




きっと、今度こそちゃんとした地獄に行くのだ・・・。

そう思いながら・・・・。

煉獄の底を思い描き、恐る恐る目を開ける・・・。

底は俺が先ほどまで死闘を繰り広げていた天幕の部屋だった。

全身は痛いが、前ほどじゃない・・・・・・?

鈍い痛みと重い疲れ・・・・。

ふと、気付くと人間に戻っていた。

恐る恐る腹を探る・・・。

・・・・元に戻った・・・!

あのハゲ凄い医者じゃねえか!?

癌を素手でもぎ取ったのか!?

そんな事を考えながら驚いていたとき・・・。

ジジが嬉しげに入ってくる。

『コウタローーーーーーーーー!良かった!一時はどうなるかと・・・・』

涙ながらに話す奴。

俺が噛んだ腕には包帯が巻かれていた・・・。

相当強く噛んだ筈だ・・・・悪い事した。

「すまない・・・・癌になってもう長くない・・・・ってそう思って・・・」

『がん?コウタロー?ガンとはなんなんですか?』

「あー、可也の確立で死ぬ病気の一つだよ・・・・それにしても御前ん処の医学なのか?

魔法なのか?まぁ・・・癌を素手で直す何て、すげぇよ」

代償は物凄いものだったが・・・・・。

其の時、宰相が布に包まれた何かを、腕に恭しく抱き入ってくる・・・・。

病巣か?・・・いや・・・そんなグロいもん見たくないんだが・・・・・。

丁重にお断りをしようと声を出そうとした・・・・其の時。

宰相の腕から弱々しい泣き声が漏れる・・・・。

驚きびびる俺。

一寸待て!病巣が生きてる!?

宰相は俺の驚きを全く無視して笑顔だ。

『お世継ぎ誕生、おめでとう御座います』

・・・・・・・・・はぁ?

おいおい・・・・俺は男だ。其れは無理だって・・・・。

「おいおい・・・其れは病巣だろ?」

『何を!貴方と王との愛の結晶です!』

ずいっと見せられる其れ・・・・・。

赤いサル・・・。

お情け程度に生えた髪は金・・・・。

・・・・・・・・・・はぁ?

一寸待て・・・・・。ん?

『タバコ吸われてましたよね?』

「嗚呼、其れの所為で癌になったんだからな・・・・・」

『あれは男性に強制的に妊娠を可能にさせる薬なのです』

「・・・・・」

『わ・・・私が服用しようとしたのだが・・・・コウタローが吸ってしまったから・・・』

モジモジ・・・とするジジ。

ワナワナと震える俺・・・・・・・。

目は光り、髪が逆立つ。

「・・・だましたなぁああああああああああああああああああ!!!!」

間髪居れず宰相の笑顔。

『いえ、只言わなかっただけです』

其れは、召還された四人の精霊王達によって掻き消される。

天幕をふっ飛ばし、炎が燃え盛り。風が竜巻となり天まで上る。暗雲が立ち込め雹が降る。

地面が揺れ回りに亀裂が走る・・・・・。

宰相は吹っ飛ばされ、ジジは近くの岩場で難を逃れる。

弧を描き飛んでいた、赤ん坊とやらも見事に空中でキャッチしている。

・・・・ちぃ!御前は何でそう逃げるのが上手い!

其れから一週間この恐ろしい天候が続く。

収まったのは、ジジが抱いていた赤ん坊が泣いたから・・・・。

仕方なく俺は其れを取り上げる。

勿論、ジジには其のまま空中散歩に行って貰った。






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