【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 2 □■




俺は咄嗟に手をバタつかせる

「ぐぁ!」

鈍い音と共に低い唸り声。気が付くと其処は病室だった。

低い声の主は俺の横でうずくまっていた。

「おい、何やってんだ海道・・・」

其処には件の事件で一緒だった同傘下系列の若頭補佐が居た。

同期ということもあり個人的にも付き合いの有る奴だ。

「若頭!!!」

という怒号に近い呼び声と共に、部下の崎島が駆け込んでくる。

奴はその叫び声が海道のものとわかってもチャカを戻さず

海道に向けている・・・・・・・・・。

この崎島、俺よりも少し高く、広い胸板、長い足、顔も精悍な部類に入る。

通った鼻筋、男らしい彫りの深い顔、薄い唇。

浅黒い肌、黒髪を後ろに撫でつけている。

その癖、浮いた話ひとつ聞かない真面目な男だった。

其の上、出来る男を地でいく・・・・俺とは大違いだ。

夢の中のあの王子と奴を見比べてしまう・・・・・アッチが陽ならこっちは陰だなぁと

ふと、未だ向けられているチャカに気づき、言ってやる。

「夢見が悪くて近くにいた奴を殴っただけだ・・・・・チャカなんて物騒なものはしまっとけ」

何か崎島は納得が入ってないようだったが渋々と其れを収める。

俺は寝癖の着いた頭を掻き、ポケットを弄る。

気づいた崎島は苦笑いを零す

「病院ですよ?」

と言いながらもタバコをだす。

俺は、ばつの悪そうに笑うしかなかったが銜えてた物に流れるように火をつけられる。

大きく其れを吸い込む・・・・何だか物凄く久し振りに感じる味だった。

頭が覚める其れ。俺は煙を吐き出し、くわえ煙草のまま問う。

「で?状況はどうなってんだ?」

その問いに流れるように答える・・・・もう長い付き合いだ、ツーカの関係。

「あれから、実行犯を見つけ出し、落とし前はちゃんとつけておきました」

「さすが、崎山ちゃんは仕事が速いわ」

奴はちゃかして近くの椅子に腰を下ろす。

「海道お前うるせぇよw」

といいながら近くに有ったティッシュボックスをなげつける。

それを崎島は冷たい目で見て、落ちたティッシュボックスを元の位置に戻して言う。

「指示した人間が未だ不明です。・・全く、無茶はしないで下さいってあれほどいってるのに・・・・」

奴が疲れたようにコメカミに指を当てる。

「無茶だの無理だのやってなきゃ大鬼じゃねえよw」

海道は俺の頭を軽く叩く。

こら・・・一応怪我人なんだ、丁重にあつかえや・・・

そう思いながら手を叩き落とし、蹴り飛ばしてやる。

そこで、ふと思い立つ。

「あー、一応同傘下の黒崎あたりも調べてみてくれ」

黒崎は同傘下とはいえ、最近怪しい動きが目立っていた組だ。

先日の定例会でも親爺と言い合っていた人間だ。

再度、海道は俺の頭を軽く叩く。

・・・おい・・・。

暫く飽きるまでそうさせるか・・・・。

「!そうですね・・・そっちの可能性もある」

奴は、顎に当てた手をその儘に、口を引き上げ笑う。

目の前の部下は俺の下に何故ついたのか疑問に思うくらい出来た奴なんだが・・・

俺は叩き上げで伸し上った人間で意外とこのカンがあたる。

いい加減、海道のこれを辞めさせるべく俺は奴にまた近場に有った枕を投げる。

若頭のかわりにこいつに当たれば良かったのに・・・的な不吉なことを考えているのだろう。苦虫をかんだようにして舌打ちをする。

俺は再度煙を口から吐き出す、そして手近の缶に灰を落とす。

ふと聞こえたその台詞。

・・・うーんと・・・・今同じような内容の台詞が耳をかすめたが気にしないでおこう。

俺は奴に向き直る、おいおい・・・・海道は一応同傘下系列の若頭補佐だから穏便にな・・・・

そう言おうとした其の時だった。

「医者の話だと少なくとも一週間は安静です、今は麻酔が効いてますが弾肩を貫通したんですから・・・・」

にこりとしながらそう崎島が言う。

俺は不穏な空気を察知する・・・・。

こいつがこういう笑いをするときは何か嫌な事考えているときだ・・・。

ブーーーーーーー・・・其の音が病室に鳴り響く・・・奴はナースコールを押した音だった。

フリーズする俺。げ!?もしや・・・・ナースコール!?

手には煙草を挟んだ状態・・・・・ヤバイ・・・慌てる俺。

「暫くは安静にしていてください・・・」と笑顔で言うそれ

暫くすると・・・・・・・




・・・・・・・最悪だ・・・・

俺は其れをみて頭痛を覚える。

期待を大きく裏切り、身長の高い、肉付きの良い看護師(男)が小走りでやってくる

オマケに毛むくじゃらで顎割れている・・・スポーツ刈りのそれ・・・・

濃い笑顔で入ってきたそれは、俺の手に有る物を見ると、鬼の顔になる・・・

「大鬼さん、気づかれましたか?って!タバコなんてすっちゃいけませんよ!」

と言いざま凄い速さで銜えていたタバコをとられた。

嗚呼・・・俺の煙草が・・・・

その泣きと

看護婦が男でむさ苦しい以外の何者でもなかった

その泣きと・・・

その二つが俺を凹ませる・・・。

ここは定番的な看護婦に変更していただきたい・・・・健全な男の心境だ・・・

後で、崎島にでも言っておくか・・・そう考える・・・

まぁ、前回美人のナースに手を出した経緯もあって是になったのかもしれないが・・・

是は酷過ぎるだろ・・・・・?ブツブツと呟きながら・・・




其の間にもヤローのナースは手馴れた作業で何かを進めていたらしく・・・・

俺が気づいたときには・・・・腕を持ち上げられていて・・・・

袖を捲くられ、消毒のスーッとした感覚が走る。

「はーい、ちょっとちくっとしますよ」

其の声が振る。

ぶす・・・・

いてえ・・・・・と思うと同時に眠気が・・・・・・・・・ちょっと待ってくれ!お前絶対厄介払いを大人しくさせるために・・・!!

絶叫したいそれは、眠気で儘なら無くて・・・

捲くった袖を元に戻し、布団を掛け直す・・・うう・・眠い・・・

「今は傷を治すためにもぐっすり寝てくださいね」

ぼやける視界の端でニコニコと看護師は営業的なスマイルをくれていた。

殺意を抱いた目で睨んだが・・・・眠気で余り伝わらなかったようだ。



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