【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 19 □■




広い草原に銀の波が埋め尽くしていた。

此処は、隣国アダラとの国境の境。

俺は愛馬シュヴァルツに跨り、最前の陣に立っている。

ヴィルとガヴィがジジの居る天幕から出てくる。

何やら作戦会議をしていたらしい。

隣国アダラ、其処は傭兵の国と呼ばれているらしい。

アダラの人間は体格が良く、勇猛果敢な人種という事で、国王が徴兵して、

「傭兵」として国の主要なとして輸出している。

・・・って始めにそんな国相手に喧嘩売って、不利じゃないか?

『アダラの傭兵を根こそぎ此方に持ってこれれば、其れは大きな戦力なんです』

と宰相が丁寧な解説を付け加えた。

『其れに、あの国はガタイが良くても知略に欠けてましてね・・・・』

呆れ顔で言う奴。

嗚呼、馬鹿にしてる

『力の強い者には絶対服従の掟がありましてね、其処を利用させていただきます』

「へー、利用するっつったって・・・・王が一番強いのか?やっぱり」

『そうです』

「へーーーーー」

ジッと、見つめられる俺。

・・・・何か企んでるだろ。

『とても好都合な事に、貴方は強い者と戦うのが好きでしたよね?』

「まぁな・・・時と場所にもよるぞ?」

予防線を張っておいてるんだが・・・・

『公務を休んでまで、武芸大会に出られたのです。さぞかし、世界一と恐れられる化け物・・・・いえ

猛者と一線交えてみたいとは思いませんか?』

公務休んだの、根に持ってるな・・・

真面目な顔で提案をされる。

おいおい・・・・化け物って恐ろしいフレーズが聞こえたんだが・・・。

『宰相!何てことを言ってるんだ!!可愛い私のコウタローがあんな奴の前に立たせる訳には行かない!』

『ある意味、貴方が立ったら危険なんです・・・』

・・・・何か、有りそうな物言いだな。てか、さり気無く自分のものの様な言い方してんじゃねえぞ!

そう思いながら、奴の弁慶の泣所を蹴ってやる。

悶絶するジジ・・・・。

『殺してしまっても・・・いえ、いっそ一思いに殺してしまってください』

国のおはようからおやすみまでを守る宰相が危険な提案をしてます・・・・。

両肩を掴まれ力説されてもなぁ・・・。

『それに、このアダラ近隣の強国相手に其の領土を守ってきた唯一の小国。

・・・要は、負けた事の無い国相手に戦いを挑んだのです、

然し、其れはアダラの兵とまともに戦ったらの話』

一寸マテー!何、脅してんだよ!

『そして、唯一我々が勝つ方法が、王と単騎で戦い勝つ事・・・』

「ヴィルかガヴィはどうなんだよ?あいつ等将軍だろ?」

至極もっともな答えだと思うが・・・あいつらだって強いし・・・。

然し、宰相は眉間に皺を寄せ、困ったようにこめかみに指を当てる。

『そう出来ればそうしたいのです、然し彼らにも、アダラの血は混ざってまして。

彼らで勝ててもこの連鎖は終わらない、其処で全く関係の無い貴方が出番なのです』

・・・・成るほど・・・。

「・・・・解った。其れなら仕方ないよな・・・」

渋々俺は了承したのだった。




翌日、敵の陣営に象の様な影を見る・・・・・3mはあったぞ。

「・・・・ありゃ象か?」

俺は、目を凝らし聞く。

宰相は爽快な笑顔で即答をした。

『あれがアダラの王フィル・アズィームです』

「・・・人間と戦うんだよな・・・?」

『はい、彼はれっきとした人間です』

ニコやかに返される。

『大丈夫、昨日の内に王との戦いを申し込みましたので・・・・・』

マテ、昨日深夜に話を聞いたんだぞ・・・?

睨む俺、ニコやかな宰相。

・・・・嵌められた。

かと言って、後には引けない状態だった。




ファルジアの軍とアダラの軍が対峙する中、俺とアダラの王っていう化け物がその前に出る。

うぁ・・・・でけえ。規格外のデカさに戦慄が走る。

まともに当たったら死ぬわ・・・。

動きがとろそうなのが、せめてもの救いか・・・。

そう考えながら、腕を鳴らす。

『俺は御前に勝つぞ!ファルジア王を嫁にするんだ!』

・・・・・うぁ、宰相の殺意の意味が解ったぞ・・・。

決して悪い奴ではなさそうなのだが・・・・、趣味と頭が悪そうだ・・・・。

あれでよければ熨斗を付けて御前にくれてやる・・・・そう言おうとしたとき・・・。

『馬鹿者!私の身も心も、コウタローの者だ!御前の入る隙なぞ1ミリたりとも無い!コウタローの強さを思い知るがいい!!!』

ジジに・・・先を超されました。

怒りで赤くなる先方。おい!火にダイナマイト入れてどうする!?

『俺の方が・・・・・・!こんな小さい男の何処が良いんだ!御前を満足させる事が出来るのは俺だぞ!?』

奴は俺がジジを抱いていると勘違いをしたらしい。

・・・・・・口が裂けても、事実は言わないが!

・・・此処はやはり早く・・・殺す・・・・。

飛んでくる拳を流し、その力で体制を崩した敵を足払い、宙を舞う巨体。

何て面白いように技を決めさせてくれるんだ・・・・。

こいつが馬鹿でよかった・・・・是でいければ勝てるな。

そんなことを考える。

然し、其れは甘い考えだった。

ガタイのデカさは、当たり強さと直結していたのだ。

幾ら、投げても平気な奴。

・・・・馬鹿は、痛覚も鈍いらしい。

意を決し、鳩尾に肘を入れる。

もんどりを打って倒れる。

決まったか・・・・?

俺は上がった息を整える。

一寸した油断だった。

伸びてきた腕・・・・・・・・・。

しまった!

一番避けたかった状態、両腕で動きを封じられた!

持ち上げられる体。

強力な握力で握り締められ悲鳴を上げる体。

ぐうぅうう・・・・。

ギリギリと締められる。

遠のく意識・・・・。

空気が吸えねえ・・・・。

『コウタローーー!!』

ジジの悲鳴。

『王!あれを!!』

宰相の叫び。

『ジョルジュ・ファルジアの名を持って神々の王黒きアラカナ、ネーロ・レ・ティグレの鎖を解き放つ!

目覚めよ、ネーロ・レ・ティグレ!其のあぎとと爪を持って己が敵を砕け!』

其れは、俺の頭に直接響く。次の瞬間何か割れる音がどこかでした。

敵の腕の力が弱まる。

スルリと落ちる俺。其の儘、奴の首目掛け地を蹴る。

嘘のように体が軽い、肉の感触、血の匂い。

『ぐぁあああああああ!』

掻き毟り、振り飛ばされそうになる、俺は顎の力を込める。

空気が抜けたヒュウと言う音が喉からする。

次の瞬間、地響きを立て、獲物が倒れる。

其処には、血の泡を吹き、倒れるアダラの王。

俺は前足をビッコを引いてその上に立つ。

此処はやっぱり勝利の雄叫び!

『ニャオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!』

ガオーーーーーーーーーーーーーーーーー!!じゃないのか!?

予想外の発音に躓く俺だった。

『コウタローーーーー!!』

其れを見て感無量なのか、俺を抱き上げギュウと抱き締められる。

無茶苦茶苦しい!!

俺は体を捩り、逃げようとする。

次の瞬間、ギクリと腹部の激痛が俺を襲う。

痛てえええええええええええええええええええ!

『コウタロー!?どうしたの?』

グッタリとした侭の俺に流石の鈍感王子も気付いたらしい。

『誰か典医を!!!』

泣き叫ぶ声。

抱き締められる体。

少しでも痛みを和らげるために体を丸める俺。

尻尾は垂れ下がったままだった。

そうして、俺はブラックアウトをした。





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