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■□ 大鬼氏の憂鬱 17 □■ 『コウタロー!』 血相を変えたジジが、飛び込んでくる。 抱きつかれ、肩に顔を埋められる。 苦しい・・・ 幾分やつれた顔、綺麗なのに台無しだ。 相当心配したのだろう・・・ 「心配かけた・・・」 と言い、頭を軽く撫でてやる。 ジジの後を追ってきたのか、少ししてから宰相が息を切って部屋に入ってくる。 宰相の顔はジジの其れよりもっと酷い物だった。 目の下に隈ができて、その瞳には疲労の色が濃く出ている、何時も美しく肩に流していたプラチナブロンドの髪は所々跳ねていた。 一週間俺を探し回ったので、宰相が政務を全てこなしてたらしい。 「あ。明日からアラカナの長老の処に行きたいんだが・・・・」 とても言いづらい・・・ ジジと宰相の周りに暗雲が立ち込める。 「い・・行くッつっても、ちょっと2〜3時間行って帰ってくるだけだぞ?」 『コウタロー、君は自覚が無いかも知れませんが、 命も狙われるし、貴方の力を利用しようって人間も居るんです』 眉間に皺を寄せ、顔を両手で挟まれる、 ・・・ぬ!? 逸早く気づいた俺は、近づいてくる奴の顔を両手で押える。 「いや、だからこそ長老の下でアラカナの知識を学ぶんだぞ」 俺は、歯を食いしばり押えつつ、其れを言う。 っく!顔に似合わず、何て馬鹿力なんだ・・・。 『貴方が若し、他の者に・・・』 奴が口を開く。 いかん、このままでは押し切られる! 咄嗟の判断。 「少しでもアラカナの術とか使えれば・・・御前の力になれるだろ!」 目を瞑り、悲鳴のように叫ぶ。 瞬間、迫ってくる力が止まる、 ん?俺、今、とんでもない事言ったかも? 恐る恐る、片方の目を開いてみる。 げ! 其処には目を潤ませ、花を何時もの2倍背負ったジジが! 手で口の辺りを押えていた。 ・・・・隙間からちらりと見えるそれは・・・鼻血か? ・・・殴らないで鼻血出せる奴を見たのは初めてだ。 奴の目に俺がどう映ってるのか・・・そう思うと怖く感じるんだが・・・ 『・・・良いでしょう。その代わり、貴方から口付けをしてもらいましょう、其れが条件です』 ・・・はぁ? 「おい、何故そういう話になるんだ?」 頭が痛い・・・。 『出来ないようでしたら、鎖に繋いででも行かせません』 奴の目は本気だ・・・。 本当に鎖で繋ぎ、行けないようにするのだろう。 うう・・・・。 俺は、奴に近づき、期待を浮かばせる奴の目を片手で隠す、 そして、空いた手で奴の襟首を掴み引き寄せる・・・ っは! そこで俺は気づく。 息を呑み見守る、家臣というギャラリーが居た事に。 俺は静かに、然し腹の底からだした、ドスの利いた声で 「御前ら、殺されたくなけりゃ、今すぐ回れ右をして部屋から500メートル以上離れてろ。 絶対近づくなよ・・・・・・」 殺意を込めて奴らを睨む。 蜘蛛の子散らすように逃げる其れ。 5分もしないうちに静かになる。 俺は溜息を吐いて、期待で頬を赤らめた奴に視線を戻し 其れを続行させた。 「じゃあ、行って来るわ・・・遅くとも3時間位で終わる」 午前に何時もの剣の稽古をこなし。奴との昼食を摂った後だった。 『本当に・・・、本当に気をつけてくださいね・・・』 「大丈夫だよ!ったく。道は一方通行だ。 アレは普通の人間じゃ通れねえよ・・・だから安心しろ」 食後のタバコを燻らせ、俺は答える。 俺は、目を閉じヨボヨボな爺を思い浮かべる。 口を開く闇、足を進める俺。 闇のトンネルを抜けた処を抜けると、其処は前と同じチンケな小屋 『お待ちしておりました』 膝を折り独特の礼。 「ああ、早速教えてくれ・・・・」 『まぁ、お座り下さい』 椅子に座るように促される。 無言で腰を掛ける。 渡される、琥珀の飲み物。 『我々は人々から神と呼ばれる存在と言うのは御知りですかな?』 「ああ・・・」 其れは、最初に此方に来たときに・・・聞いた事。 『では、其の神が何故、人の世に降りるのか・・・お分かりですかな?』 「・・・さぁ・・・国に富と栄光をもたらすためか?」 月並みな台詞だが・・・ 『其れは副産物にすぎませぬ、この世の調停者としての役割が真の目的ですな』 世界のパワーバランスを傍観する者ということか? 然し、と続く。 『昔は確かに獣と人2つの顔を持つ調停者の機能を果たしておったのです、然し 何時ごろか、人々は我々を利用しようとした。 そして其れは可能な物と成ってしまうのです。 元来我々は、獣の姿と人の姿を持っており、 獣の姿は力が強く頑丈、人の姿は弱い生き物なのです。 人の姿に落とさせ、其の力を利用される者、性的玩具に成る者すら・・・ 今、王の使えている方の様な人は珍しいですな』 性的玩具・・・ではないな・・・多分・・・ 同じ様なことはされているが・・・ 「・・・調停者の存在意味があるのか?」 『精霊と神と人の関係を守るためのものでございましたが、 人々がこの様な方法を考え出すとは誰も考えなかったのです。 然し是は、古の盟約・・・』 「古の盟約を利用して人々は其の力を利用するのか・・?」 『・・・』 俺にそんな話をした意味が何となくわかった気がする。 爺、御前とんだ曲者だな。 だが、是が奴への償いにも成るのかも知れない。 溜息を付き口を開く。 「・・・この世に俺の様に調停者として降りた奴はどの位居るんだ?」 『貴方様を含め、今居るものは5人で御座います。』 「悪いな、俺は壊す事しか知らないが・・・・」 『いえ、この老いぼれも尽力を尽くしましょう』 喉が渇く・・・・。 俺は随分と冷めた飲み物に口を付ける。 「・・・・・・・・しょっぱいぞ是・・・」 塩が入った其れに、ボソリと言う・・・ この人生の様だ。 戻 TOP 次 |