【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 15 □■




擦れる吐息、零れる喘ぎ、

汗ばむ髪を掴まれる

俺の上に乗る男に、噛み付くように口付けをされる

蹂躙する舌に、声が上がる

嬲り、残滓を引き、離される唇

男らしい薄い唇、

次の瞬間

『さぁ、食わせろ!』




「うぁあああああ!」

跳び起きる。

・・・夢か。

安堵する俺

周りを見渡す。其処は巨大な鳥かごの中だった。

外は巨大なホールで、豪華な装飾品で彩られていた。

気づくと、俺の周りに2人のアラカナが居た。

独りはトルコブルーの瞳と真っ直ぐな銀髪を背まで伸ばした髪を緩く一つに結んだ清楚な子供、

もう独りは深いグリーンの瞳と緩くウエーブの掛かった銀髪を高く一つに纏め腰まで伸ばした子供。

顔立ちは定番だが嘘の様に整い、かつ美しかった。

この一族は王以外はこうなのか・・?

『お目覚めになられましたか!嗚呼、黒の王まで・・・何たること!』

トルコブルーの瞳の子供が叫ぶ。

『せめて、・・・せめてこの檻から出れれば・・・』

そう言うと、2人は顔を覆ってしまう。

泣いてるようだ。

こんな年端も行かない子供すら食おうというのか・・・

怒りが沸々と込み上げる。

「泣くな、俺が何とかする」

子供すら守れないのに王と呼ばれる資格は無い

『ほう、何とかするとは如何するのだ?』

其の声の先には件の包帯男がいた。

「エクレールガニェ」

・・・しかしシンと、静まり返った侭だった。

ちぃっ!こりゃなんかされたな・・・。

『ふっ、其処には特殊な結界が張ってある幾ら御前でも、無理だ』

奴は笑い、手を鳴らす。それに応じるように3人の兵が姿を現す。

『面白い余興を見せてやろう』

3人に取り押さえられ、檻からあのグリーンの瞳の子供が出される。

『御前の末路だ見ておけ』

次の瞬間、剣が胸に突き立てられた。

咳をし、胸を押さえる。

口から血が流れた・・・・・・。

噛み締めた口から鉄の味が滲む。見開く目。

ブチン・・・・・・俺の中の何か切れた音がした。

何が・・・何が王だ・・・子供すら守れないなんて・・・・

「ああああああああああああああああああああああああああ!!」

其の侭、床に拳を何度も叩きつける。

『ふん、他愛ない』

奴は悠然と、笑う

「・・・火の王エフリート俺の中に来い」

瞬間、焼けるような熱さ。

『黒の王!私達のことは構いません!』

血を吐きながらも、叫ぶ子供。

俺は無心で檻に手をかけ、力いっぱいに開く。

最初は微動だにしなかった其れは、変な音を立てながら動き出す。

檻の外に手を出す。バチバチと弾かれる力を感じる

「ぐぁああああああああああ!!」

一際大きく弾かれた後、何の反応も無くなる。

静かに俺は、檻からでる。

「水の王リバイアサン、奴の傷を治せ」

子供に刺さった剣が自然に落ち、傷が煙を上げて消えていく。

「エクレールガニェ」

手に確かな重さが来る。

其の侭、飛び込み兵士3人を薙ぎ払う。

「風の王ジン2人を安全な処へ飛ばせ」

瞬間、竜巻が襲い、アラカナの子が消えた。

『面白いな・・・・わが身に精霊を宿らせ、内から結界を破ろうなど・・・』

無言で飛び込み、其の侭剣を交える。

跳ね返され、

又飛び込み、相手の剣を跳ね上げる。

「火の王エフリート!奴を燃やし尽くせ」

瞬間群がる炎。しかし奴が、何やら呪文を詠唱すると其れは消えてしまう。

チィ!

飛び込み様、

「死ね」

一閃。奴が黒い血飛沫を上げる。

『無駄だ。俺は呪いで死なない体になっている』

「・・・・・そうか」

『そう、だから私の出番なのですよ』

声、俺の背後から。勢い良く振り向くと。

白銀に赤い目冴える様な美人。何時かの魔界のアラカナが、其処にすらりと立っていた。

『さぁ、準備は整いました。私の仕えし魔界の王よ、かの者を煉獄の牢に永久に

繋ぎ、果てる事なき責め苦を与えたまえ』

次の瞬間、包帯男の周りに黒い炎が吹き出てくる。其れは巨大な手の形になり、

包帯男を掴み、地へと引きずり込む。

『くぅ!御前まで来るとは!魔界から出る事は許されていないはず!?』

『そう、私は今もあそこにいますが・・・・・・ほら』

そう言い俺のズボンから緑色の石を取り出す。

『魔石か・・・』

舌打ちをし、憎々しげに睨む。

『代償は大きかったですがね・・・、まぁ害虫をのさばらせて置くわけにはいきませんから』

随分と、奴は沈んでいた。

胸元まで来ている。

包帯男は、顔を掻き毟る。

解れる包帯・・・・

其処には、銀の髪に紫の瞳・・・・・

しかし、其れよりも驚いたことは・・・

顔が、知り合いに瓜二つだった事・・・・・・

何故御前がアラカナなんだ?

崎島・・・

全てを飲み込んだ其処には、何も残っていなかった。




『あるとき、禁忌を犯したアラカナが一人。

其れは同族殺しの罪。あまつさえ、食べたのです同族を。

その者は、死なない体を得、

代償に同族を食べ続けなければ

ならない体になってしまったのです』

赤い瞳の美人はそう静かに言う。

『黒の王よ、彼の者は私が地獄の檻に入れておきますので』

微笑み、目を細められる。

「助かった、有難うな・・・」

精一杯の感謝。

『記憶と知識を補うためにも一度長老にお会いになられるといい。

それでは私は戻りますので』

そう言うと、姿が消える。




TOP 次  
inserted by FC2 system