【小説】

■□ 大鬼氏の憂鬱 11 □■




スペインの闘牛会場な建物が俺の前にそびえ建つ。

観客波に一瞬たじろぐが、人に尋ねる。

少し離れた場所だが、その近辺の人間はどう見ても一般人ではないのが解る。

顔に傷が有ったり、顔立ちもどう見ても悪者の部類だろう。

組の構成員達の中に居るようだ・・・・。

少し前の世界が恋しくなった俺だった。

俺は漸く参加選手の募集している箇所を探し出す。

『良し、次!名前は?』

「コンドラト・ オーグ だ」

一応、是でいけると宰相にお墨付きを貰ったので其れを言う

偽名だ、まぁ此処の奴らは脛に傷持ってる奴も多いだろうから是でいけると思うが。

黒髪が目立つと思いきや、今俺が光臨したとかなんとかの影響で

黒髪に染めるのが流行ってるらしい。

何というか、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

『良し、次!』

名前だけで終わるのか・・・無用心な・・・

そんな事を思うが、そうでなくては俺なんて参加できなかっただろうし・・

案内されて通された部屋は薄暗く、余りいい雰囲気ではなかった。

一言で言えば、ヤロー臭い・・是だろう。

余り声を掛けてもらいたくない俺は隅っこで静かにしていた。

ふと、斜め向かいの片隅に目をやる。

騎士だろうか。甲冑を身にまとい細身だが身長ほどはある刀を肩に掛けて座っていた。

ちょっと日本刀に見えなくも無い。アレがあるんだったらあれがよかったな。

フードを深く被っていて解らなかったが、恐らく相当できる奴なのだろう。

隙が無い。

随分其処に集中していたらしい

『コンランド・オーク!コンランド・オークはいないのか!?』

名を呼ばれていた。

「あ、俺だ!」

『出番だ。此方に』

「おう」

長いトンネルを行くと眩しい光りが見えてくる、外だ。

出た其処は、円の闘技場が一段高く設置されていた。

そこに立つと審判なのか中央に男が居た。

対峙する男は俺よりガタイも良く、傍目から見れば負けると思われるのかもしれない。

『始め!』

其の言葉で俺はそのままスタスタといく。

奴は巨大な斧を構える。

『死ねええええええ』

振り下ろされる斧、斜め横に動き避けると。

そのまま地面に突き刺さってしまう、俺はそのままそいつの手を捻り上げ斧は地面に落ちる。

『ぐああああ』

居合いの一つだ、動きが遅い斧だから是が出来るのだが。

そのまま肩を外してやる。

ゴキリといやな音がして奴が転げまわる。

『あ・・、勝者コンランド・オーク!』

会場はザワザワとしていた。

ダークホース登場って所か?

恐らく此処でも勝者を予想して賭けが行われているはず・・・

後で買って置こう。

俺は再度あの部屋に戻る。ザワザワとしている。何故?

『おい、アイツ優勝候補のヴァギトやったぞ!』

おいおい、まてまて・・・、どれだけ選手層薄いんだ?

俺はちょっと眩暈を覚えたが、何とか踏み留める。

先ほどの奴が未だ居る、

『キリル・アモン』

奴は其の呼びに腰を上げ出て行った。

暫くしただろうか、

『ぎゃぁああああああああぁあ!』

地獄の断末魔のような叫び声がした。

皆ぞっとして青ざめる。

嗚呼、血の海なのだろう・・・想像に難くない。

帰ってきた奴はやはり返り血で染まっていた。

あの形の刀は相当切れるはずだから・・・・

頚動脈をバッサリいったのだろう・・・首の。

恐怖が部屋を支配した、静かな空気。

「おい、このフード使え」

俺は使おうと思っていた黒のフードを渡してやる。これなら帰り血は目立たなくなるからな。

白だと目立つから、引かれるんだよ。

男はペコリと礼をするとスッと部屋から出て行った。

どんどんと人が減ってきた。

恐らく半分まで減っただろうか。

もうそろそろ2回戦目か、という事は俺の出番が近いわけで・・・

『コンランド・オーク』

「へぃへぃ」

次はまともな奴でありますように。

『始め!』

其の声と同時、

敵が剣を抜く寸前、奴の懐に入り、手で柄を鞘に押し戻す。

『なっ!?』

「すまんな」

そのまま頭突き、鼻血を吹きながら吹っ飛ぶ。

そいつは白目を剥き倒れていた。

『勝者コンランド・オーク!』

暇だから控え室に戻らず、通路で試合を見るか。

通路の壁に凭れ掛かり人が通るのを待つ。

何人目だろうか、件の騎士が通る。会釈される、

あ、フードか。そいつのフードは、白から黒に変わっていた。

俺は、返事に手を軽く上げて返す。

騎士は闘技場で対峙していた。

『始め!』

其の言葉と共に、刀が一閃する。

会場の叫び声。

弧を描き飛ぶ其れ、次の瞬間血の雨が降る。

相手は絶命しているだろう。

強いな。・・・けど漸く全力で戦えそうだ。

頭の中で動きを反芻する。

動きは見えてた、いける。

たまに思うんだが、俺は平和では生きていけない人種なのかもしれない。

牙が錆びて行くのが解ってしまうから・・・。

外で一際歓声が上がる。

闘技場を見てみると、ミイラの様に包帯を巻いた男がいた。

獲物は大剣ガヴィと同じくらいの、其れを持ち構えていた。

ぉ、あいつも強そうだ。

俺は身を乗り出して見る。

開始の言葉が始まった瞬間・・・・・

頭上高く跳び、剣を振り下ろす。寸での所で交わす相手、

しかし、その剣は剣圧だけで半径2メートルのクレータが出来上がる。

其れに巻き込まれた相手は血を吐き倒れる。

ヤバイだろ・・・・人間技じゃねえ。

いけるか?・・・・でも喜ぶ自分も居るわけで・・・

死んだら・・・花くらい手向けてくれるかな・・・

風が頬を掠める。俺は青い空を見上げた。




俺は其の後も順調に相手を倒した。

次の相手は・・・・・

闘技場に行くと刀を持った騎士が待ち迎えていた。

俺がやった黒いフードがはためく。

『始め!』

金属音が響く、

首の横には相手の刀、剣で受け止めてはいたが

其れが無かったら間違いなく、俺の首は飛んでいただろう。

息付く暇も無く、俺は其の刀を返し、剣で応戦する。

受け止められ、跳ね返される、

後に飛ばされ、又地を蹴り向かっていく。

受け止め、横に受け流す、

地を蹴り向かってくる、其れを相手の肩を使い、

飛び越え、背後に回り、

斬る、

刀で受け止められる、跳ね飛ばす、

下がりざま奴は溜めが入る。

来る。

次の瞬間。

頬がチリチリとした。

俺は奴の刀を寸でのところでかわし、肩口を刺していた。

拭ってみると、かわし切れてなかったらしく血が手に付く。

勝負は決まった。

『勝者コンランド・オーク!』

ワァと歓声が響く。

俺は奴に手を伸ばす。

「良い試合だったよ。又機会があったら頼む」

『さすが、黒のアラカナ殿。』

「・・・知っていたのか?」

『ええ、私は魔界のアラカナより、護衛と伝言を承った者です』

魔界にもアラカナはいるのか。

それにしても護衛って・・・俺の?

『貴方様の護衛です』

あの、自分で自分の護衛倒してしまったのですが。

でも、楽しかったし・・・・良いか。

『私は、護衛を出来る状態ではないので、伝言のみお渡しします』

そう言うと、緑色の石を渡された。

そして、次の瞬間、煙のように消えた。黒いフードのみを残して。

幻のようなことだったが、手に残った石が其れが本物だと語っていた。

俺は控え室に戻った。

光りに翳して見る。只の石のようだが・・・

瞬間、まばゆい光りが広がる。

「うぁ!」

薄目を開け見ると半透明な人影が立っていた。

白銀に赤い目冴える様な美人、アラカナか?

何でこう奴らは作り物みたいに美人なんだ?

『えーえー、写ってるのかな?』

・・・。其の美人は、マイクのテストをしているようだ。

親しみがわくが、チャンとそこは切っとけよ!とつっこむ。

『・・・我々の王黒きアラカナ様、ご機嫌麗しゅう御座います。

先日の誓約の儀に出席できず大変申し訳ありませんでした。

貴方の事ですから、いろんな人に迷惑を掛けてないか心配です。』

・・・知り合いのようだが・・・

あまり、性格は良くないようだ。

『挨拶は是くらいにして、本題です。

どうやらアイツが貴方に気づいたらしく

今回の武術大会に出て暗殺を目論んでいる様なのです。

でも大丈夫、聡い私が護衛を付けましたので。

安心して下さい。では、我が王よ、くれぐれもご自愛下さいますよう』

膝を着き独特の礼をする。次の瞬間ブツリと映像が切れた。

・・・武術大会じゃなく武芸大会だぞ。

いや、それより俺を暗殺する計画?!

護衛・・・俺が倒しちゃったし・・・

恐らく、包帯男が暗殺者なのだろう・・・あれは、人間技じゃないぞ・・・?




TOP 次  
inserted by FC2 system