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■□ 大鬼氏の憂鬱 10 □■ 『それでしたら、ご自身で身を守れるよう早急に魔法を覚えていただかねばなりません。 後、他の3元素の精霊も使えるようにならねば・・・』 それが、俺が武芸大会に出る旨を聞いた宰相の言葉だった。 俺は夕飯の後、のんびりとしていた時、それを思い出す。 嗚呼、タバコ・・・吸いてぇ・・・・ 勿論そんなものはこの時代には無いんだろう。 そんな食後のタバコの欲求を紛らわす為にも他の事を考える。 やっぱり自分の身くらい守れる力は持たなきゃな・・・ 他の元素精霊か・・・ 確か、目を瞑って・・・・ 深呼吸して・・・・あれ。何の精霊を呼び出そう・・・・ ・・・うーん、ふと訓練場の土の冷たさと思い出す。 そうだ、土の精霊が良い、土の精霊にしよう。 えぇと最初から・・・・ 目を瞑って、深呼吸。 土の精霊達が手に集まってくるイメージ・・・・ あの冷たい土を手で触ってるかんじで・・・ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオォ・・・・・ 巨大な地響き。こわごわと目を開けると・・・ 其処には巨大な獣の形をした岩・・・・・・・ 前回焦げた天井は見事、その岩により突き破られていた。 『吾、黒きアラカナの呼びに答えし、四精霊王が一人、土の王ベヒモス』 精霊王ってもんは皆でかいのはわかった・・・だが然し。 「・・・すまん。この部屋が壊れない程度の大きさになってくれないか?」 『御意』 次の瞬間、頭の大きさほどの獣になる。 ここで盟約だったよな・・・長い・・・覚えてるのか不安だ・・・ 「我神々の王ネーロ・レ・ティグレ、古の盟約により土の王ベヒモスと盟約を結ばん。 ・・・・我、汝の呼びに答え、其の力を与えたまえ。 我は汝を慕うもの、我を災いから逃れさせ、汝の名を知るもの故、我を高く上げ 我が汝を呼び求めるとき、我に答え、苦難の襲うとき、我と共にいて助け、我に名誉を与えたまえ 生涯、我を満ち足らせ。・・・・汝の救いを我に見せよ」 おぉ!覚えてたよ!こんな長ったらしい台詞。 何回かあとで詠唱して覚えよう・・・ 獣がその言葉に答える。 『我、如何なる場所であっても、汝へとやって来て、そして汝を祝福するであろう』 言い終わると同時に、岩の獣が消えた・・・・・・・・ 嗚呼、天井だけでなく屋根すら突き抜けていたらしい、満点の星空が壊れた穴から覗く。 その後、騒ぎを聞きつけた近衛兵とジジが、この部屋の参上に呆然としたのは言うまでも無い。 『こ・・・これは?!』 「あー、わりい。なんか土の精霊呼び出したらこんな事になったわ」 へらへらと笑ってみる。 剣術の稽古の上、土の精霊を呼び出した疲労でもうへとへとだった。 俺はフラフラとその場を立去ると、ベッドに倒れこむ。 直ぐに泥のように眠ったのだった。 パチリと目が覚める。昨日の疲れが嘘のような清清しい目覚めだった。 まぁ、ジジに抱きつかれてるのを除けば・・・だが。 やはり、運動したのが良かったらしい。 熟睡をしているジジを蹴飛ばしてベッドから突き落とし、伸びをする。 俺は身を起こしストレッチをする。 疲れは完全に取れていた、身も軽い。 ふと、ベッドサイドのテーブルに目がいく。 ん?何だ?何時もはこんなもの無かったはず・・・。 豪勢なオルゴールのような箱が其処にあった、 好奇心に駆られ中を見てみる。 「ぉお!」 是は!タバコ!? こっちに来る前にそれこそ死ぬ程吸っていたタバコだが、 流石にこっちには、そういうものは無いと諦めていたのだ。 薄い紙に包まれた葉。流石にフィルターは無かったがまさしく是はタバコ! 早速、口に銜えるが、火が無い事に気づく。 「ちぃ火!火の王エフリート付けろ!」 其の言葉に呼応するように先に火が着く。 よし! 久し振りのそれを噛み締めるように肺に吸い込む。 ふーーーーーーーーっ。 至福の時・・・・。 すると、床に落ちていたジジが起き上がってくる。 『お早う御座います』 「嗚呼、お早う」 『あれ・・・此処にあった箱・・・』 キョロキョロと箱をさがす。恐らく、今俺の吸っている物だろう・・・ 「是のことか?わりい、今吸ってる」 すると奴は至極驚いたようだ。 いや、御前の吸っちまった・・・・その・・悪かったな。 『コウタロー!?吸ったんですか?』 「?嗚呼、タバコだよな?」 今、口に銜えてるだろうが。 『私が吸おうと思ったんですが・・・、そうですか、解りました。 貴方が吸いたいのでしたら止めません。』 ニコニコと笑って肩に手を置かれるが、叩き落とす。 気持ち悪いぞ御前。まぁタバコは肺ガンになるって言うからな。 それにしても御前もタバコ吸うのか・・・。 意外と言っちゃあ意外だな。 『あ、服用は一日朝と夜、食後の5回ですので。 それ以上は危険なものなんで気をつけてくださいね』 「へぇ、こっちのタバコは吸う本数が決まってるんだな」 俺はのんびりとくゆらせる。 『本数を間違って死亡する者も居るくらいなのです』 「そうか・・・」 まぁ、一日5本なら十分だ。我慢できる。 タバコとは味が少し違うが、世界が違うんだ其処は仕方ない。 それに本数を間違えて死亡するとまで言われちゃ言いつけは守らねばなるまい。 武芸大会に出るためにも、余りタバコは控えた方がいいだろうし・・・。 其れを吸い終えると、俺は剣術の稽古に行ったのだった。 ガヴィとヴィルの鍛錬が始まる。 力ではガヴィ、速さではヴィルが抜きんでていた。 2人に順番づつ相手をしてもらい、鍛錬するのだ。 是は正直キツイが、一番是が手っ取り早く実力を上げる方法。 20回ほどやりあっただろうか、漸く昼になる。 地獄の鍛錬を午前中にこなした俺は、せめて食事位一緒がいいと言った、 ジジに付き合う事にする。 「おっ、宰相!俺土の精霊と契約できたわ。」 専用の食堂に着くと、傍らに立つ宰相がいた。 『ほほう、それは進歩です。後、2元素の精霊ですね』 ニコニコと笑う。 『向こうでは是をタバコと言うのですか?』 朝、俺が吸った物を示す。 「ああ、まぁあっちじゃ酒みたいなもんで嗜好品だな」 『・・・ほうほう。・・・まぁ此方では栄養剤みたいなものなのですが。 服用しすぎると危険ですので、言いつけは守ってくださいね』 「まぁな、死にたくはないからな・・・一日5本だろ?」 『ええ。』 ニコニコと笑う。 俺は席に着きそのまま食事を取る。 昨日の食事に比べると断然豪華だった。 綺麗に味付けされたステーキや白身の魚。 音を立てることなく食う奴を見る。 「そういえば、御前ってもう王子では無くなったんだよな?」 『ええ、誓約の儀から国王となり政務を行えるようになりました』 「それまでやってなかったのか?」 俺は白身の魚を、口に放り込み租借する。 『いえ、政策など出来る事はやっていたのですが、式典などは出来なかったので 何時も宰相負かせで。』 「意外だな、御前間抜けだから。全部宰相任せかと思ったぜ」 『大鬼様、貴方の前では陛下はアレですが、優秀な賢王として歌われているのです 例えば、2年前の凶作の折国庫を開け備蓄された食料を国民に配給したり、 何年か前の大洪水では、ダムの建設、上下水の設備を整えられました。 又、腐敗した各地の貴族を制裁し、領民達が訴える事の出来る法を作られたのも』 「へぇ、意外と凄いな」 『え!・・・コウタロー・・・いえ、私は立場相応の仕事をしたまでで・・』 赤くなりながらフォークで”の”の字を書いている・・・ チャンと義務教育を受けてない俺には、解らない世界なんだろう そうだ・・・ 「おい、此処って教育施設とかあるのか?」 『?軍の教育施設なら有りますが、それ以外はありませんね』 「なら、一般人に対して基本的な読み書きや計算を教える教育施設は無いんだな?」 『ええ、そうですね』 『コウタロー其れがどうかしたのですか?』 「いや、だったらその教育施設を作って欲しい」 『そうですね・・・、それはいい考えかもしれませんより良い人材を見つけ、育てる上でも』 『さすがコウタロー!』 と言い放つと、抱きつかれる、ええぃ!辞めんか! 『早速、大臣を呼び、施設を作らせましょう。後人材の登用もせねばなりませんね・・・』 ジジを突き放し、俺は食後のタバコを吸う。 ふぅ、至福の時・・・。 『今すぐにでも施設を作るよ!大臣は呼んだか?』 『はい、控えの間にて待たせております』 『よし、じゃあ行って来るから・・・』 奴は屈み込み手にキス・・・・ ぎゃ! 「おぃ!そういうのは辞めろって!」 『では、此方で・・・』 今度は頬に・・・・いや、そうじゃない! 俺が、憤慨しながら剣を抜こうとして近衛兵に羽交い絞めされているうちに 笑顔で奴は出て行ってしまった。ヒラヒラと手をふりながら。 宰相も後に続く。 午後にも鬼の剣術訓練が待っている。俺は急いで訓練場へと急いだ。 そんなこんなで、剣術訓練漬けの日々を送ること一ヶ月。 戦い方にも慣れ、上手くなったのが自分でも解る。 武芸大会は明日に迫っていた。 『随分と無駄な動きが減りましたね』 『剣圧も随分と重くなったな、教えた甲斐が有ったよ』 二人は太鼓判を押すように言ってくれる。 「いや、御前達のお陰だよ。・・・その・・・本当・・・ありがとな」 目を見開く奴ら。礼を言われたのが意外だったらしい。 瞬間奴らが自分の顔を手で押さえる。 真っ赤だ。 笑ったのか? 『・・・陛下の気持ちが解った気がする』 『ええ・・・・』 なにかボソボソと言ってたが・・・ あードキドキする・・・武芸大会・・・ やるべきことはやったんだし悔いは無い。 『コウタロー、大丈夫ですよ他の兵士ならとっくに根を上げる訓練をやって来たのですから』 そう言うと、奴は後ろから俺を抱きすくめる。 こら、耳に声を吹きかけるんじゃない! だが、安心したのも本音で・・・ 『嗚呼、強く美しい貴方をこのまま閉じ込めて私だけの物にしたい』 いや、そうすると武芸大会に出れないだろうが! 俺は、奴の腕からすり抜けると軽く小突く。 「そんなのは、俺の性分じゃねえ。・・・やりたいのか?」 閉じ込めたいのか? 『・・・解ってます、けど、私の知らないところで貴方が笑顔を見せているのかと思うと・・・』 おいおい・・・危険だぞ そのまま頬を両手で伸ばす。 「俺と御前は運命共同体だろ、ちゃっちい事を気にすんな。それにそれは反対に言い換えれば 俺が居ないとき、御前にも俺の知らない表情があるってことだ」 奴は目を見開き、抱きつく。 首筋に顔を埋めると、低く響く声で言った 『そんな事を言われたら・・・大会が終わったら寝かせませんので其のつもりで』 藪を突いて蛇を出す。そんな言葉が浮かんできた。 俺の腰に当たる蛇を感じ、ガックリと項垂れたのだった。 戻 TOP 次 |