【小説】

■□ 犬猿の仲間 3 □■




何時もよりハードな練習を終えたころにはすっかり日が暮れていた・・・・。

やべっ・・・親爺、腹空かして待ってるな・・・

俺は急いで汚れた服を脱ぎ・・・スポーツバッグに詰める

「じゃ!俺先に帰るけど・・・戸締りは頼むな!」

そう言い俺はダッシュで家路に戻った。

途中のスーパーで夕飯の買出しをした後・・・・俺は玄関の扉を開ける。

「親爺ただいまー!・・・ん?」

玄関には、見たことの無い靴が置いてあった・・・。

編集者の人かな・・・?

そう思いながら俺は急いで夕飯の用意をしに、キッチンへと足を向ける。

何時も通り、俺は手際良く用意していく・・・・。

その時だった。

「あ、じゅたろーくんおかえりー」

そう言いながら親爺がリビングに顔を出した・・・・

「あ、親爺飯送れてごめん・・・今作ってるから・・・」

そう言いながら・・・振り向く。

「じゅたろ!」

見知らぬ声が響く・・・。

え?・・・・

不意に掛けられた声にうろたえる俺。

懸命に手に持ったお玉で顔を隠そうとする。

此処での俺は、知り合い=恥ずかしい・・・となっている・・。

大の男がエプロン・・・・それもごっつい男が・・・。

「あ、そうそう・・・・今日から・・・ほら・・・この前連絡があった・・・従兄弟のロラン・ヴォルコフ君」

そう笑顔を浮かべながら言う。

「・・・・・あ!ロランか、何だー・・何年ぶりだろ・・・12年?」

そう言いながら・・・笑顔で答える・・・。

「うん・・・・じゅたろ・・・会いたかったです・・・」

久し振りに会ったロラン。金髪碧眼は其の儘に・・・

絹のような髪は肩に流れ・・・・昔の肩位の長さからずいぶん長くなっていた。

男の人には失礼かもしれないが・・・驚くほどの美人になっていた。

この狭い部屋が何時もより1.5倍明るくなったかと思うぐらい

眩しいです・・・はい・・・。

笑顔で微笑むロランは・・・・花を背負ってて・・・・。

宛ら・・・俺と並ぶと美女と野獣・・・・。

「あ、日本語この前より流暢に話せてる・・・」

ロランの前に居ると・・・むず痒く感じる・・・。

俺は俯きながら・・・そう言う。

ふと、強い力で腕を引かれる・・・・。

・・・状況が掴めなかった・・・・。

え?

と思う・・・・其れは不意に起こったから。

唇に触れる・・・柔らかい感触・・・・。

目の前には青い目が煌いていた。

ロランの美しい顔のドアップ・・・・。

・・・・・!?

ぉ・・・俺の・・・・・・・。

俺のファーストキスが!

従兄弟・・・それも男に・・・・奪われた・・・・

ショックで白くなる俺に親爺は朗らかな笑みを浮かべながらこう言ったのだった。

「ロラン君は今日から間借りする事になったから。じゅたろーくん彼の面倒は宜しく頼むよー」

と・・・・。

親爺・・・従兄弟にキスされている息子を前に其れはないだろぉおお!

「いやー、昔の佳織さんを思い出すなぁ・・・」

俺達二人を見た感想・・・・。

佳織さんとは俺に似た・・・・俺の母さんのことだ。

前から思ってたけど・・・・親爺・・・何かずれてるよな・・・。

ほら・・・外国では挨拶な訳だし・・・・と自らに言い聞かせる。

どっと疲れた俺は・・・・。

その後、味噌汁の吹き零れた音で現実に戻された。

ぅあっと!味噌汁・・・沸騰しちまった・・・・!

急いでキッチンに戻り・・・火を止める。

其処でふと思う・・・。

「あー、ロランが来るなら・・・もっと豪勢にすればよかったな・・・」

そう・・・。

俺は急いで冷蔵庫を物色して・・・即席で天麩羅をやる事に決めたのだった。

「「いただきます」」

席に着くと皆で手を合わせる・・・。

「いやー今日は天麩羅かぁー」

親爺は嬉しげに磯辺揚げを5個取り皿に入れている。

「ほら・・・親爺・・・野菜もちゃんと食べて」

そう言いながら・・・・俺は掻揚げを投げ入れる。

「父さんは野菜が無くても生きていける体なんだよ」

と自信満々に磯辺揚げを頬張りながら言われる・・・。

嫌・・・零しながら言われても・・・迫力無いし。

「はいはい・・・」

そう言いながら台布巾で零したテーブルを拭いてやる。

「じゅたろ、是美味しいです」

そう言いながら微笑む・・・。即席の天麩羅なのに・・・。

うぅ・・・・悪いことしたな・・・。

「あ、ロラン飯終わったら風呂出来てるから・・・此処に間借りってことは荷物はもう来てるのか?」

そう言いながら聞く。

「はい、明日の午後には到着する手筈です」

「・・・・」

荷物まだ着て無いじゃん。と突っ込み。

「あー、じゃあじゅたろーくんの部屋に布団もう一個あったねー、其れ使うと良いよ」

最後の磯部揚げを頬張りながら言う親爺。

幸せそうな顔。

「そうだな・・・って、そう言えばロランはどこの部屋使うんだ?」

幾つか部屋は空いてるが・・・。

「うーん、あ。じゅたろーくんの部屋の隣・・・あの部屋が一番大きいよ。其処はどうだろ?」

「嗚呼、書庫みたいになってる所ね・・・」

「荷物が来て、部屋が整うまでじゅたろーくんの部屋にご厄介になってれば良いしね」

そう言いながら箸を振り回しニコニコと笑う親爺。

「じゅたろ、ご厄介になります」

そう良いロランがペコリと頭を下げる。

焦る俺。

「嫌!何言ってんだ!従兄弟じゃないか・・・困ったときはお互い様だ・・・こっちの方が申し訳ない位だよ」

そう言うと、奴はフワリと綺麗な笑いを浮かべる・・・。

うん・・・相当自慢の従兄弟だな。

「あ、じゅたろーくん武蔵と常陸に餌やったっけ?」

その言葉に・・・。

「あ・・・・」

止まる俺。

「・・・・御免・・・遣ってないや・・・」

「武蔵と常陸・・・それは誰ですか?」

首をかしげ不思議そうな顔でそう聞いてくるロラン。

あ、そうか名前しらないのか。

「ほら、昔ロランから貰った犬の名前だよ武蔵と常陸て付けたんだ」

そう言いながら俺は餌を即効で用意する。

「俺一寸餌やってくるから・・・気にせず食べてて」

「あ、見に行きたいです。武蔵と常陸が元気にやってるか見たいです」

そう良いながらロランが席を立ち俺の持っていた餌をヒョイと持つ。

「一緒に見てみるといいよー、吃驚する位、大きくなったから」

親爺は6個目の磯部揚げを頬張りながら、言ったのだった。




外に出てみると夜は満月だった。

俺は月明かりを頼りに犬舎に行く。

ロランも俺の後を付いて来る。

「武蔵と常陸・・・ロランの事覚えてるかな?」

確か目も開ききっていない頃だったし・・・覚えてないんだろうな。

犬舎の前に到着すると俺はロランを呼び止める。

「其処で待ってて・・・武蔵と常陸・・俺と親爺以外の人に懐かないんだ・・・」

そう苦笑いをしながらロランの手から餌を取る。

恐る恐る俺は中に入り・・・餌を置く。

何時も通り水を取り替え・・・掃除をしようとした・・・その時。

ワンワン!

と低く大きな声が背後から襲ってくる。

2匹尻尾を振って・・・。

勢い良く転がり、顔を嫌とばかりに嘗め回される・・・。

「ひえええええええええ!」顔を青ざめさせ・・・叫ぶ俺。

「ステイ!」

その声が響き渡る。

瞬間、武蔵と常陸が急に座りピタリと行儀良く成った。

俺は起き上がる。

「大丈夫ですか?」

そう言いながらロランが入ってきて俺を助け起こす。

「あ・・・ああ御免・・・」

俺は普段は言うことを聞かない武蔵と常陸が、

従順に彼の言うことを聞いていることに驚いた。

「ロラン凄いな・・・・武蔵と常陸は親爺の言うことしか聞かないのに・・・」

因みに俺は懐かれてるが・・・・言うことは聞いてくれない・・・トホホ。

ロランはその言葉にニコリと笑うと埃を払ってくれた。

クゥーン・・・と俺の顔を見ながら申し訳なさそうにする武蔵と常陸。

俺は其れを優しく撫でてやる。

「僕も手伝います、二人で遣れば早いです」

ニコリと笑う。

「有難う」

俺も其れに笑い返す。

そうして月夜の中、二人で犬舎を掃除したのだった。






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