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■□ 犬猿の仲間 1 □■ 俺は、学力レベルもそこそこの川西高校ラグビー部主将を務めている。 専ら制服がダサいので有名な学校だったが・・・・。 昔ながらの詰襟である。 俺はソコソコ気に入っていたが・・・・。 犬伏十郎太17歳男、少し犬が苦手な、至って普通の男子学生。 そう・・・、苗字に犬と付いているのに・・・。 昔はそれを馬鹿にされる事もあったが、 今では190cm台の巨体を誇り、筋肉も付いた俺にそんな事を言う奴は居なかった。 「親爺!ただいまー」 部活をして帰ってきた俺は、エプロンを付け、為れた手つきで料理の用意をする。 5年前に母さんが不慮の事故で他界して以来・・・・親爺と二人きりの生活だ。 「じゅたろーくんおかえりー」 一寸間の抜けた返事が書斎から返ってくる。 親爺は売れっ子のポルノ小説作家なんてのをやっている・・・・。 スーパーで買った食材を手馴れた仕草で入れていく。 今日は、焼き魚と味噌汁、そして漬物、煮付け・・・と。 俺は大根を勢い良く切って行く。 母さんが死んでからこの五年間、空っきし家事の出来ない親爺の代わりに全ての家事を こなしていた。 仕事が一段楽したのか、ヒョッコリと顔をだし美味そうな匂いに鼻を鳴らしていた。 親爺、犬伏泰輔。 俺に全く似ずに優男の部類に入る。色白の肌に茶色に近い髪と瞳。身長は俺より10cm程低かった。 体つきもヒョろりとしていて、文化人を思わせる眼鏡が綺麗な顔に良く似合っていた。 そう、驚くこと無かれ俺は・・・・母さん似なのだ。 親爺と同じ身長を女性にして持ち、体格も彼より良かった母さん・・・・。 顎が割れてるのをとても気にしていた人だったらしい・・・・。 俺は手早く煮付けの下ごしらえをすると、次の料理に取り掛かっていた。 ラグビー部では俺は寡黙で恐れられている存在で通っていて・・・・是を見たら皆驚く事間違いないだろう。 「じゅたろーくん武蔵と常陸に餌はやったかい?」 「あ・・・親爺ごめん・・・未だだ・・・」 俺は番犬でもある武蔵と常陸に餌をやりに庭に出る。 親爺は変な家業の割りに財が在るらしく、日本家屋の広い庭に俺達は住んでいた。 ・・・・俺の犬の嫌いな理由・・・其れが武蔵と常盤である。 武蔵は漆黒の毛並みで金の瞳、常盤は白銀の毛並みに青い瞳。 アラスカンマラミュートという種類で狼の血も入っているこの犬達・・・足の指が一本多いらしい。 俺は恐る恐る庭にある犬舎に近づく・・・。 餌を手にして・・・。 そぉっと中に入り・・・・餌を置き、水を替えようと器を手にした時だった。 ワンワン! と低く大きな声が背後から襲ってくる。 起き上がると170は優に超すそのガタイが 2匹尻尾を振って・・・。 勢い良く転がり、顔を嫌とばかりに嘗め回される・・・。 俺は、只硬直するだけ・・・・。 「ひいいいい・・・おやじ!助けてえええええ」 何とか出た声は情けないぐらい振るえていた。 小さい時から襲われ続けた俺、そりゃ苦手にもなるって物だ。 「武蔵も常陸も御前の事が大好きなんだねぇ・・・」 と平和な顔で眺める親爺。 何とか犬達が餌を食べる隙を見計らって、這い蹲って犬舎から出ると。 可也、日が傾いていた。 俺はよれた服を直し、台所へと戻る。 キッチンに戻ろうとした其の時だった、家の電話が鳴る。 ん?編集者の人かな・・・・? と受話器を何気にとって見た。 「コンバンハ、ミスターイヌブシハイラッシャイマスカ?」 と片言の日本語が受話器から流れてくる。 「え?あぁ・・・・はい・・・・少々お待ち下さい」 日本人特有の英語アレルギーを見せた俺は、親爺にさじを投げる。 「親爺!何か外国人らしき人から電話だぞ!」 名前は聞かなかったが・・・、親爺は気にせず其のまま受話器を持つ。 どっと疲れたそれに溜息を一つつきキッチンで作業を再開させる。 「じゅたろーくん、ほら、従兄弟でカナダのペンシルバニアに住んでた子居たでしょ?」 食事の最中、先ほどの電話の相手らしい奴の話を降る。 ・・・・そんな奴いたかな・・・・? 思い出せないで居ると、親爺は昔の思い出を幾つか言って聞かせる。 「ほら。じゅたろーくんが小さいとき良く来たじゃないか・・・・金髪の可愛い男の子だよ」 うーーーーーん・・・・・いたっけ? 「ほら、武蔵と常陸をプレゼントしてもらっただろ?」 ・・・・・・・ああああああああああああ!そう言えば、半ば強引に押し付けるように渡された二匹の記憶を思い出す。 確か、ロラン・ヴォルコフ・・・・・ロランだ! 「ああ!ロラン!・・・ってそれがどうしたの?」 「そう。ロラン!彼、今度仕事先が日本の会社になるらしくてね・・・此方の方に間借りしたいと・・・今連絡が入ったんだよ」 「へえええええ、ロランかー」 俺は大根と揚げの味噌汁を啜る 俺は、金髪碧眼の美少年、ウィーン少年合唱団の中の一人のような彼を思い出す。 小さい頃の思い出は美しいく、かつ甘酸っぱい物だった。 TOP 次 |