【小説】

■□ 獣達の三重奏 2 □■




その後、俺は数人に脇を抱えられ、拘置所に護送車で送られた。

降りると、部屋に通され身体検査をされ、刺青の有無を確認される。

裸になり、検査を受ける・・・・、扱いは既に受刑者の其れだ。

看守は俺の背中を見たとたん驚いたようだ・・・。

俺の背中には八岐大蛇のモンモンがある・・・祖父の代から付き合いのある彫師に彫らせたものだ。

変わったところといえば大蛇といっても蛇ではなく、竜な処であるが・・・

俺の背中には八頭の竜がのたうち回っているのだ。

是は、任侠の世界に入るときの覚悟として入れたものだった・・・。

其れは彫師曰く、自身の代表作。と言わしめる程の出来に仕上がった物らしい。

身長は183cm・・・今年とうとう40歳の大台に乗ってしまった俺だったが、

日ごろ鍛えているお蔭もあってか無駄な贅肉は無かった。

顔は美男子と言う訳でもなかったが・・・もてる部類の顔・・・・。

俺は幾分ヤツレタ自分の顔を見る。

髭も微妙に伸びかけ短く刈っていた髪は伸びかけていた。組を出る前との違いに、痛々しさを感じさせる。




此処の中の俺の名前が103番。

拘置所の中の暮らしは留置場に比べ楽なものだった。

規律的な物が刑務所に似ていたが・・・飯も出前に出来る上、小さな物の購入できる。

俺は漸く組の顧問弁護士に会うことが出来た。

六十歳近い年配の小男は汗を拭きながら、顔を青ざめさせていた。

彼も祖父の代からお世話になっている・・・・。

ふと、俺は笑いがこぼれる・・・俺は全て、祖父の代からのモノで組を維持させていたことに・・・。

今更、気づいても手遅れだったが・・・。

分厚いガラス越し・・・穴が小さく開いた其処から声が聞こえる。

背後には看守が立ち俺たちの話を聞いていた。

「いやぁ・・、こりゃ偉い事になっちまったよ」

彼は、汗を拭きながら開口一番にそう言った。

「嗚呼、話は聞いたよ・・・・組が無くなったとか何とか・・・未だ信じられないが・・」

「本当だよ・・・ふぅ・・・警察の摘発と同時に島を取られていってな・・・あっという間だった」

「狙ったようにだな・・・」

「そう・・・まぁそこいら変はわしが調べよう・・・ところで・・・三代目・・・」

真剣な面持ちで問いかけられる・・・。

「嗚呼・・・・俺がやるわけ無いだろ・・・」

疲れた様にこぼす・・・・。

「そうだろう、そうだろう・・・然し、物的証拠のみとは言え、

三代目の指紋の付いた拳銃が有る訳だし・・是はちと・・難しいぞ・・・・」

俺は黙って俯き、手を組む。

大体が組員に罪を着せるのが一般的なこの世界・・・・

俺自体其れをして来た訳で・・・・

まさかこんな形で入るとは思ってもいなかった。

「まぁ、出来るだけのことはやるがな・・・恐らく・・10年・・・」

俺は愕然とする・・・・。

「もうちょっと詳しく事件について調べてみるか・・・あ、・・・拳銃の方はは身に覚えあるか?」

それに俺はすぐに答える・・・刑事に何度も言った言葉だった。

「あれは俺のだが・・・金庫に閉まってあったものだぞ・・・・?」

そう、確かにあれは俺の拳銃だが・・・・何時もは金庫に閉まってある筈の物だった・・・。

「尚更怪しいな・・・・じゃあ、そろそろお暇するよ、あ、後是は着替えと生活用品一式だ」

そう言って、分厚いガラスを隔てた向こうから、小さい入り口を経てこちらの世界に来る。

俺は其れをありがたく受け取る。

是で少しは、楽になる・・・。そう思って・・・。

「よろしく頼みます・・・」俺は其れだけを彼に言い深く礼をする。

「なぁに、お安い御用だ」

そういって目尻の皺を深め笑う。




独房に戻り、寛ぐ・・・。

日ごろ読んでいなかった本ではあるが、退屈凌ぎには調度良い者だった。

サスペンス物で殺人事件だと言う事を除けば・・・・。

俺は其れを夢中になって読みふける、

「103番!検事が聞きたいことがあるそうだ・・・出ろ!」

という声で我に返る・・・気づくと、日は可也傾いていた。

そういって鍵を開けられる・・・・・。

後ろ手に手錠を嵌められ・・・・縄で連れて行かれる。

何なんだ・・・?検事が聞きたい事?

俺は予想にもしていなかったことにうろたえる。

「鈴木検事!ご命令どおり被告人103番をお連れしました!」

そう言うと、重厚そうな扉を開け、早く行けとばかりに押される。

よろめきながら入る・・・。

其処には、一見して上質と判るスーツを身に纏ったが二人立っていた。

「嗚呼、ご苦労だった、其の侭戻って結構」

その言葉に、戸惑う看守。

そりゃそうだろう・・・検事様を殺人犯と一緒にして、何か有ったら大変だ。

然し、上の命令は絶対なのか、奴は渋々其れに従う。

重い扉が音をたてて閉まる。

・・・・・・。

俺は唯黙っているしかなかった。

何を話すでもなく時間が経つ。

「こんにちは、大和田芳さんとおっしゃいましたか・・・?私、検事の鈴木と申します・・・」

穏やかな笑みで話される其れ・・・。

40後半・・・若しくは50代だろうか、そいつは少し頬が扱け、頭も幾分後退し、目は細く、鼻は丸く身長も170cm前半。

当に普通の親爺といっても過言でない。

そして俺は、もう片方の男・・・、其方を盗み見る。

20後半か・・・30代だろうか、そいつは髪を撫でつけ、神経質そうな目元には眼鏡をして居た、口元には冷酷そうな笑み、

顔は鼻筋が通り、彫りが深くその肌の色は白かった。

身長は180cm半ばといった所だろか?

俺は其れを訝しげに見る。もう一人の男は黙ったまま此方を向いているだけだった。

「単刀直入に話しますと・・・貴方の犯したとされる殺人事件・・・その罪と貴方の身体を交換していただきたい・・・」

・・・・何を言ってるんだ?俺は奴が何を言ってるのか理解に苦しんだ。

沸々と怒りが湧き上がる・・・。

にやりと笑う奴に俺は其の侭襲いかかろうとする・・・・。

次の瞬間・・・・バチンといった何か弾けた音・・・・そして衝撃と痺れが襲う・・・・。

痺れる目を凝らす・・・もう一人の男の仕業らしく・・・何やら警棒の様なものを持っていた。

くそっ・・・・・くそぉお・・・・・俺は悔しさをかみ締める・・・・。

そして、意識を手放したのだった・・・。








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