【小説】

■□ 獣達の三重奏 1 □■




「組長!サツが来てアキラが殺されたって・・・!」

早朝、組員のその叫びで始まる。

「何!?アキラが?」

アキラは組の末端の者だったが、構成員の少ないこの組では知られた顔だった。

・・・・最近見かけねえと思ったが・・・、何かに巻き込まれたか・・・・。

舌打ちをして寝床から飛び起きる。

アイツはすこし学生から抜け切れず、ヤンチャな処があったからな・・・。

恐らく、一寸した事で絡まれて、殺されたのだろう・・・・。

この弱小の組には必要な構成員だったのに・・・。俺は悔しさで唇を噛み締める。

為れた風で、俺は、何時もの紺の着流しを着て、帯を締める。

外では早朝というのに警察の方々が足を運んでいた。

俺は、粗相の無い様、中に通させ。

「早朝お疲れさまです」

挨拶を軽くする。

俺は、てっきりニ、三話を聞いて終わり・・・・そう、考えていた。

二人組みの刑事は俺に向き直り、事務的に口を開く。

「大和田組組長、大和田芳だな・・・・三芳晃殺害の件で一寸、署までご同行願う」

流れる様に出される警察手帳。

俺は予想外のことに、目を見開くが、お構いなしだ。

強引な其れに、組員が牙を剥く。

「何しやがる!親爺に!!」

間髪入れず止める。此処でもめたら後が面倒だ。

「うるせえ!静かにしろ!・・・何、昼飯にカツ丼食ってくるだけだ・・・・大人しく待ってろ」

2人の刑事に前後を固められ、外に停めて在る覆面パトカーに乗り込む。





事情聴取をする部屋なのだろうか・・・・・狭い部屋に鉄格子の小さい窓。

テーブルが一つ、そして安っぽい椅子が二個。

テーブルの上にはスタンドが置いてあった。

・・・テレビの刑事ドラマのままかもな。

俺は其れを見て、刑事ドラマの其れとの差を比べるほどの余裕があった。

「・・・・」

「どうぞお掛け下さいな」

年配の刑事が席を勧める。

黙ったまま、素直に従う。

どっかりと深く座る。

「現場付近にですね・・・・貴方の指紋がついた拳銃が残ってたんですよ・・・」

全く見覚えの無い其れに、俺は眉根を上げ、身を起こす。

そいつは袋で封のされた、拳銃を手に持ち、ヒラヒラと見せる。

「俺はやっていませんぜ?」

唯其れだけを言う。事実だ。

「犯人は皆最初そう言うもんさ・・・何、先は長い・・・言うまで待つさ」

奇妙に歪まれ笑う顔は、其の先に在る不安を増幅させた・・・。

戦慄が巡る。

どうやら、カツ丼を食べにきただけじゃ済まされないようだ。




数時間にも及ぶ尋問の後・・・

俺は狭い部屋に通される・・・俗に言う留置場だった。

疲れ果てた体を横にして、泥のように眠る。

そして、起きたら直ぐに、警察の取り調べ・・・

「大和田さん・・・いい加減本当の事を喋ってもらえませんかね・・・・?」

此処にきて3ヶ月が経とうとしていた・・・、寝ようとすれば起こされ、もう一人の若い刑事に怒鳴られる。

やってない物はやってない・・・・・。朦朧とする意識の中・・・・そう繰り返す・・・。

組の奴らは無事だろうか・・・。そう思いながら・・・。

ふとそう思っていたときだった。

其れは唐突に振ってきた。

「嗚呼、そうだ貴方の組・・・無くなったみたいですよ?」

一瞬何を言っているのか解らなかった。

数秒後、其の言葉の意味を理解する。

俺は目を見開き叫ぶ。

「・・・・なに!?何ふざけた事をいってるんだ!」

俺は有り得ない事を言う相手に掴み寄る。

「静かにしろ!」

其の声と一緒に、俺は若い刑事に取り押さえられ、デスクに顔を押さえつけられる。

くぐもった声しか出ない・・・・。

年配の刑事は、俺に掴まれていたネクタイを締めなおし、薄くなった髪を直す。

馬鹿にしたように鼻で笑うと、こう言ったのだった。

「あの後、他の組に全部の島奪われた上に、力で押さえ込まれたようで・・・そう時間は掛からなかったみたいですよ?」

あの嫌な笑いを貼り付けそう言う。

若い刑事に取り押さえられたまま、懸命に睨みつける。

屈み込まれ、近づく顔。下卑た笑みを模る唇。

「帰るべき処ももう無い・・・・いい加減諦めたらどうです・・・?」

其れは悪魔の囁き。

「言えば、この事情聴取もなくなりますよ?」

夕日が部屋を照らし出す。

ジッと・・・悔しさを堪えていた。

小さく弱い組ではあったが・・・俺にとっては掛け替えのない家で・・・家族だったんだ・・・・。

祖父の代から続く其れに、俺の時代で終止符を打ってしまったことへ・・・・。

自責の念と、悔しさ・・・・。

嗚咽が低く部屋に木霊する・・・・。




カエルトコロハモウナイ・・・・・・・マモルベキモノサエ・・・・

モウ・・・ラクニナリタイ・・・・




眠気と疲れ・・・・そして帰るべき組が無い・・・其れで俺は自暴自棄になったのかもしれない・・・。

「・・・・・・・俺が・・・・やったのは俺だ・・・」

そうかすれるような声で、聞こえるか聞こえないかの声を出す。

血反吐が出そうだった。

「・・・・捜査ご協力ありがとう御座います」

ニヤケた声音で言われる、其の言葉を聞いたとき・・・奴の顎を俺の拳が襲った。




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