【小説】

■□ 獣伍親爺漂流記 7 □■




ドカーーーーンッ!!!!!ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・

もうどの位時間が経ったのだろうか、現実から逃げるために意識を飛ばしていた俺だったが、

その眠りを叩き起こすよに爆発音がした。

黒く染めていた髪だったが、あの事件以来伸びっぱなしになっている。

地毛である赤髪が根元から覗いていた・・・・・・・・

俺は永い眠りから目が覚めたが、未だ現実と夢との境が曖昧な感覚のままだった・・・・・・・・・

伸びっぱなしの髪をかきあげようとして、動けない事に気づく。

拘束具は外されることは無く、眠りによって忘れていた現実に呼び覚まされる。

俺は小さく舌打をした後、この状態の元凶を探す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何やら部屋の外が騒がしい・・・・・・・・・発砲音の上に、怒号が響き渡る。

何か遠い夢の出来事の様に俺はまどろんでいた。

暫くの静寂の後、ドアが蹴破られた。

バン!という音と一緒にドアが大きく開く

一人の男が銃を構え飛び込んでくると何かに気づいたらしくこちらに近づいてきた。

「・・・・ブラッドじゃないか。10年ぶりだな・・・・・・・・・・・」

悪魔の声だった。

そこに立っていたのは思い出したくも無い人間の一人だった。

プラチナブロンドにアイスブルーの目、氷の様な男。

「随分と探したんだが・・・・こんな所ににいたのか。」

「・・・・・・・ノエルか」

俺の体に怯えが走る・・・・・・・・・奴は傭兵時代の・・・・・裏切り者・・・・・・・・・・・・・・・

こいつの裏切りのせいで俺の居た小隊は壊滅した・・・・・・・・・

生き残ったのは俺だけだった。

東欧のある国に生まれた俺は物心付いた時から兵隊にいたが、それに疑問を抱いたことは無かった。

奴は7歳年上で俺にとって兄弟であり戦場での教官で,あれは俺が20の時だったとおもう、俺は戦争の最前線に身を置いていた・・・。

止まない銃の音、爆撃。血と硝煙の匂いがこの世界だった。

「もう補給が途絶えて一ヶ月・・・・態勢を立て直すためにも一度後退したほうが・・・・。」

俺は何回この脳の無い隊長に同じ言葉を進言したのだろうか・・・・・・・・。

「ブラッド!何度言えば解るんだ!あと少しであの拠点が落とせるんだ!最後の一人になるまで戦え!」

奴は上流階級特有の発音でそう言った。
ドカーン!!

爆発音とともに小さなビルが煙に呑まれ崩れていく。

2〜3日後拠点のあった俺たちは爆破に成功した、俺達は漸く主要拠点の一つを落とせた・・・・。生き残ったのは俺とチキンな隊長、そして奴だった・・・・・。

他の奴は雨の様に流れる弾に当たり死んでいった。

廃墟と死体の山の中、収穫は無い様に思われた。

俺は教会の建物に誘われて中に入っていく。

其処には、磔にされたイエスが平和な時と変わらない顔で見ていた。

ふと、気配を感じて振り向く。

パンッ!パンッ!

納屋の方で発砲音が聞こえた。

納屋に俺は急いだ。行ってみると敵の残党に隊長は追い詰められていた。

絶体絶命というやつだ。

反射的に俺はナイフを投げる。ストライク、ナイフはそいつの首に刺さった。

返り血を浴びて腰を抜かした人間はスルーして、残りに意識を集中させる。

納屋の階段に3人ほどいるのを間合いを一気につめて殺す。狭い階段でピストルを持つ様な馬鹿で助かった。

閃光弾を投げ入れ、頚動脈を切られた男を1人盾にして飛び込む。

其処には、子供を人質に取ったリーダー格がいた。そいつが照準を合わせる前に背後に廻りチェックメイト。

子供を驚かせてはいけないと思いリーダー格の男の口に手を当て、細長い獲物を肺から心臓に刺す。

男はそのままズルズルと崩れ、床に転がる。

子供に意識を向けると、恐ろしさからか猫の様に震えていた。

ハニーブロンドにグリーンアイ、人身売買に売ったら相当な金額になりそうだ。

恐らく連れ去ったこいつらもそう考えていたのだろう・・・・・。

そんな考えを過ぎらせつつも俺は汚れた手をズボンの尻で拭き、餓鬼の頭を犬のようにポフポフを撫でてやった。

「ふぇ・・・・」

天使のような顔がぶっさいくにゆがめられると俺のズボンにしがみ付き泣き喚いた。丁度股間辺りに・・・・・・

下に餓鬼をかついで戻ると、しょんべんちびって腰を抜かしていた隊長はこちらを見るなり笑顔になっていた。

「ブラッド!良くやった!!その子はトレマン議長の孫だぞ!」

俺は眉をひそめた。

トレマン議長は、確かユーロ連合の議長であった・・・・はず

たしか最近反政府組織がその孫を誘拐したという話は大きなニュースになっていたが・・・・

無線機を使い後方の連絡を取る。

「此方、第13小隊応答願います。」

少しの砂嵐の様な音の後、声が返ってくる。

「おお、生きてたか!・・・で今の状況は?」

穏やかな見知った声が聞こえる。

「敵の拠点Cを押さえました」

声の相手は驚いたらしい

「ほぅ、応援の部隊が到着するには早い気がするが・・」

「いえ、我々の隊で鎮圧しました。」

俺たちは少ない物資の中数の限られている弾を有効に使い敵を倒した。そのうえ死んだ敵兵の武器を拾っては使い凌いでいたのである

本来の目的は、応援の部隊を到着するまで戦線を後退させない為の戦いだった。

本隊の到着は2日後。それまで待機の指示が出される。

「無線を貸せ!」

隊長は俺から無線を取り上げるとなにやら周波数を変え何処かと交信し始めたのだ

「・・・・・ええ・・・・はい、少年を助けましてね・・・」

今のこいつには千載一遇のチャンスらしい・・・・・・

本隊の到着前、一機の最新軍用機が俺たちしかいない町に降り立った。

最新の装備を身にまとった兵士達が俺達を出迎えたのだった。

中央にいた初老の男を見るなり、担いでいた餓鬼が元気を取り戻し暴れだす。

俺は無理はせずそのまま地上に降ろしてやる。

「おじいさま!」


叫びながらその男に抱きつく。

あれが噂に聞くトレマン議長・・・・財力は言うに及ばず、世界を股にかける大財閥。

どうやら、是が奴の狙いだったのだろう。

奴を見殺しにしておけばよかった・・・・・・・・・。

だから、奴はあんなにもこの拠点を落としたかったのか。

「私の大切な孫を助けてくれて有難う。」

白髪の紳士に手をさし伸ばされた。すると脇から隊長の手が出てきた。

「いえ、我々は当然のことをしたまでです。このような非人道的なやりかたを許すわけにはいきませんから。」

「ブラッド・・・・行こう」ノエルが基地に戻るように促す。

「今晩は飲み明かすか」

お互い生きていれた事に・・・・・・・。

その後隊長はトレマン議長専属の兵隊が乗った軍用ヘリに乗り込んで行ったらしい。

それ以降この基地に奴の姿を見ることは無かった。

風の便りには、奴は勲章・莫大な報奨金と貴族という身分を頂いたらしい。

俺にとっては、遠い遠い世界の出来事だった。




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