【小説】

■□ 獣伍親爺漂流記 5 □■




気がついたときには見知らぬ星に不時着をしていた。

話を追って話すと、故障したゲートが作り出したワープホールを抜けたとき、其処には蒼い星が広がっていた。

地球の様ではあったその星には土星の様なリングがあり、最悪なことに丁度そのホールを抜けた所がリングの箇所。

案の定、無数の隕石群が船を傷付け、肝心な動力部分とジェットエンジンにも隕石は衝突した。

隕石郡を抜け、その目の前に広がる星へ降りるのがやっとだった。

そしてそのまま不時着、何とか大気圏突入時の摩擦での自爆は避けれたが、片方だけのジェットエンジンでは、もう離陸は難しいだろう。

ワープホールに入ってからから今まで、短い時間のはずの時間は余りにも沢山のことが重なってもう遠い出来事のようになっていた。

何とか不時着をしていても外の環境が地球と同じとは限らない。

水の代わりに塩酸や濃硫酸が降る環境だったり、空気すら、メタンや二酸化炭素だったりするのが殆どなのである。

最悪、生きていけない環境の場合には死という末路が定められていた。

ライアンも想像がついたのだろう、沈黙がこの場を過ぎった。

「いたたたた・・・・・・・すごい衝撃だったね・・・・・」

そんな、場違いな奴でも助けられる事はある。大変な事になっているのであるが、奴が話すと小さなことに聞こえるから恐ろしい・・・。

博士も多少怪我をしていたが帰れない今となってはどうでもいい話になってしまった。

「航路からはずれてしまいまして・・・・もうこの艦での離陸は無理かと・・・・・・・・」

嘘をついてもいずればれるので伝えさせてもらった。

「いやぁ、じゃあロビンソン・クルーソーみたいな感じだねぇ・・・」

のほほんとのたまった博士を殴らなかった自分を褒めてやりたかった。

「皆さん怪我をしている、医務室で手当てを」

初めて聞いた助士というヨハネス・フォン・シュレイヤーは至極まともだった・・・・・

俺たちは医務室まで行くとガラスの破片で切った傷の手当てをした。

あの博士が手当てをするのは危険だとは思ったが一応とはいえ医学博士ももっているらしい。

何をされるか解ったものではないという不安はあったが博士に処置を施してもらった。

万が一の為、血液のストックもしておくとの事で俺達は注射機に2本ほど血液を取られた。

博士曰く、何かの拍子で怪我をして何時血液が足らなくなっても良い様にらしい。

彼は遺伝子工学専攻とのことで、2本の血液さえあれば培養は然程難しいものではないらしい。

怪我の処置も終わり一息ついたので、俺たちの今の状況を確認しあう。

一つは今の状況がなぜ起こされたのか・・・・・・・・・・・

4つのゲートを開く専用装置の一つが故障をしていたか何かで起動をしなかった事。

恐らく、それが原因だったのであろう。

一つは今置かれている立場・・・・・・・・・・・・

此処が何処であるのか、又この艦の修復は難しく再び宇宙を飛ぶことは出来ないであろうこと。

その上、この不時着した星自体我々の生きていける環境なのか分からないということ。

そして最後に今回の主である貨物をどうするかである・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「相手は凶悪犯罪者だ、生かしておけば後々厄介なことになると思うが・・・・・」

助士の至極まともな案に安堵しつつも、俺はこの降り立った土地の環境の恐怖のほうが気になっていた。

「すまないが、それより先に・・・・・俺たちが此処で生き延びれるのか調べるのが先だ」

「そうですね、もし生きれない環境だったら凶悪犯人どうのこうのっていう以前の問題になってしまいますし・・・」

「俺とライアンは探索班、ベック博士とシュレイヤーさんはここで待機していてもらえませんか?

いざというときは無線で知らせてください。」

俺とライアンは宇宙服に身を包み、船外作業ロボットに乗った。

空除室のランプが緑から赤になった・・・・・・・・・・・艦内の酸素と外の空気が混ざり合う・・・・・・・・・・・・

機械質な音をたてながら何重にもあるドアが開いた。



「小型船外作業ロボットC-060、只今より船外探索に移ります」

操縦室には、ベック博士とシュレイヤー助手が待機している。

「了解。くれぐれも無理の無いようにお願いします。」

シュレイヤー助手の応答があったので俺は安心して艦を飛び立った。





其処は一面の蒼だった。緑ではない青いシダのような物。

白い海岸のような土、空はエメラルドグリーンの何とも不思議な空間。

「綺麗な処ですね・・・・・・」

ライアンがそう呟いたのも解る気がした。

泉も澄んだコバルトブルー。

小一時間探索をして俺は空気のサンプルと土・温度のサンプルを取った。

検出した数値を見ると高濃度の酸素。

人間が生きていける環境だ土も温度も・・・・・・・・・

生きていける・・・・・・・そう確信したときだった。

「ザーーーーーーーーーーー・・・・」

艦に残してきた博士たちからの無線だ、そう思った俺は電波を合わせる・・・・・・・・

「こちら探索班そっちの調子はどうだ?」

「今のところ何も無いです。博士が研究室の方に行かれたきりではありますが・・・・・・・・・・」

あの博士は今の状況が解っていない様だ、なんに為にシュレイヤーを残してきたのか。

博士は俺の神経を減らす運命にあるらしい。

貨物庫にいる犯罪者が何かの拍子で出てくる可能性もある、俺は早々に切り上げる事を決める。

「解った、サンプルも採取したので船に戻ることにする」

俺に似合わないこの美しい世界を見つめ・・・・

「ライアン、戻るぞ。」

「は、はい!」

蒼の世界を後にした。


俺達は艦に戻り、空除室から船外作業ロボットから降りたときだった・・・・・・。

急に体が痺れ、意識が遠のいていく・・・・・・・。

エアーに何か睡眠薬を誰か混ぜたヤツがいる。

先に降り立ったライアンもまた倒れていた・・・・・・・・・。

くそ、艦に戻った事もあって油断・・・・して・・・・・・・・・た・・・・・・・




「っう・・・・・・・」

気が付いた時、そこはベッドの上だった。白い天井、消毒の匂いのするそれは余り良い物ではなかった 。

「気が付きましたか?」

・・・・声のした方を向くと、べック博士がそこには立っていた。

起き上がろうとすると、自分の体がベッドに繋がれていて動けないことに気付く・・・。

「博士、これは・・・・・・・・・どう言うことなんですか?・・・・・冗談にしては性質が悪すぎます・・・・・。」

博士は何時もの顔のままでは有ったが、沈黙が怖かった・・・・。

彼は極自然に、日常会話をするかのようにこう言った。

「いえ冗談ではありませんよ。このままだと、僕の今までやってきた研究が台無しになってしまうので。

すいませんが、貴方には犠牲になってもらいます。」

ジーザス・・・・・・・。

俺は力を振り絞ったが思うように力が出ない。薬が完全に抜けてないのだろう。

くそっ!こんなマッドサイエンティストにやられて死ぬのか、俺の人生は・・・・・・・。

博士は手馴れた作業で、クロロホルムのハンカチを俺に宛がった。





薄れていく意識の中、そいつは切ない声で俺ではない誰かを呼んだ気がした。




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