【小説】

■□ 獣伍親爺漂流記 19 □■




変わらない夕暮れの日差しが何時もの彼の部屋に差し込む。

ブラッドは何も無かったように俺に接する。

然し其れは、アーサーとしてだった。

ヨハネス・フォン・シュレイヤーという人物は消えたらしい。

彼のオリジナルでもある、エリー・フォン・シュレイヤーは血の繋がった姉だった。

そして俺とアーサーとは幼馴染・・・・。

俺は、唇を深く噛む。このどうにも出来ない状況に。

ブラッドは怪訝そうに俺の頬を撫でる。

そして一言、

「大丈夫か?何か・・・可笑しいけど」

震える体。

「嗚呼・・・なんでもない・・・・・・」

俺は笑みで返す。

何気ない其れだった。

然し、彼は其れに答えるようにフワリと軽く笑う。

甘い痺れが身体を襲う。

其れは近親相姦という甘い罪。

いけない・・・・・そう思いながらも、押さえていた黒い欲望は俺を焦がしていく。

その考えを笑うように、身体は動く。

腰に手をかけ其の儘、彼の手を一つに束ね、ベッドに貼り付ける。

指が服に伸びる。

弄る其れは、決して、女性とは言えない体・・・・。

止め具を外していくと其処には、柔らかくもなく豊満な胸も無い、筋張ったそれ。

姉に似た顔。姉は決して美人ではなかった。

鼻は上を向き、華美でもなく、どちらかと言えば地味な顔の彼。

血と炎を思い出す赤い髪と赤い瞳は姉の色・・・・・。

そばかすが散るその顔。

決して白くない肌。

けれど何故か、其れを食いたい自分が居た。

上がった呼吸を悟られなくて・・・・。

顎を手で救い上げ、唇を寄せる。

彼は、優しく微笑み俺を包み込むように抱き返す。

暖かい彼の腕、アーサーにだけ向けられてきた其れに。嫉妬が湧き上がる。

其の波は彼に向けられる。自分では止められない・・・・。

強引に舌を絡め、貪る。

彼も其の異変に驚き、苦しげに俺の背を掻き毟る。

正気になったらどうなるかは解らないのに・・・。

彼の正気・・・其れを引き戻す様に・・・・・強く舌を吸い上げる。




其の最中、静かに目を瞑って思い出す。

其れは、戻ったとき。

ノエルは戻ってきた俺達を見て只冷たい視線を寄越しただけだった。

この状況に口元だけ歪めて。

彼が言わんとする事は解っていた。

御前が其れで良いなら、其れで良い。

だが、其れは幻だって事も忘れるな・・・・。

そう言っていた。




そう考えながら、口付けを降らせる。

耳の後ろを辿り、首筋を通る。

其処に、証を刻んでいく。

其れは、

小さな意思表示。

小さなプライド。

俺の行為の・・・確かな証。

下にジワジワと進めていく其れ、

胸の飾りを舐めると、ブラッドの息が弾む。

片手で両腕を押さえたまま、もう片方で下肢を探る。

ボタンを外し全てを下ろす。

身を足の間に割り込ませ、開かせる。

頭を上げた雄の象徴、その奥・・・・。

裂けたような其処は決して大きくなく、然し確かにあるもの。

俺は彼の雄を口に含み、扱く。

「・・・あぁあ!」

漏れる嬌声に腰が熱くなる。

上下に動かし、舐める。

口の中で波打つ其れは欲望の証。

俺は其の儘、溢れた唾液を、其の裂け目に塗り、指を一本入れてみる。

「ぁう!」

それは少し抵抗をしながら沈んでいく・・・・・。

滑り、熱い其処。

一際俺の腰の雄が熱を持ち、溢れる吐息。

然し、予想外の台詞も一緒に零れた。

「愛してる・・・・ブラッド」

何故か其の台詞が。

予想していなかった自分の言動に焦る。

其れは皮肉以外の何者でもない言葉で返される。

「俺も・・・・・・アーサー」

冷水を浴びさせられる・・・・・、正に其れ。

急に止まった俺を怪訝そうに見るブラッド。

・・・・其れでも良い、だけど・・・・・。

目を瞑り、顔に皺を寄せる。

暗い心。

俺は、強引に其処に己を宛がう。

現実を突き破るように・・・。

完全に濡れていなかった其処は、可也の抵抗を見せて沈んでいく・・・・・・。

「う・・・ぁう・・・・・・」

ブラッドは痛いのか、眉間に皺が寄っていた。

其れを見ないふりをして、其の儘、腰を打ち付ける。

身をかがめ、彼の目尻に滲む涙を舐め取る。

久し振りの其の感覚。

雄の本能を満足させる行為。

記憶の中の其れは只の作業だったが・・・・。

何故か是は、全く違う・・・・。

全身を熱が回り、其の存在を求める。

熱い其れに本能で動く。

ふと、彼の股間に目がいく。

痛みが支配しているのか、彼の雄は縮みかけていた。

手を伸ばし、痛みで萎えた雄を擦り上げてやる。

急に与えた感覚は、驚くほどのものだったらしい。

「ああああああ!」

目を大きく開き、口が戦慄く。

全身を伸ばす其れは、俺を締め付けた。

イキソウになる・・・。寸での所で耐える。

締まる其処に耐えながら、彼の雄を追い立てる。

「あ・・・あぁ・・・イク」

先走りで濡れた手が彼の限界を示していた。

俺も限界が近い・・・・・・。

一緒に・・・・・・。

そう思いながら深く突き上げる。瞬間、手に熱い物が濡れる。

俺も、彼の奥深くを抉り、其れをぶちまける。




一緒に行きたい・・・・そう思うことがどんなに陳腐なのかは解っていたが・・。

何故なら、彼は俺じゃない奴を見てるわけで・・・・・・・・・。

心が通っているわけではないのに、身体だけでも通わせようとしている俺。




悲しすぎて笑えた。

「愛してる・・」

彼は、静かに涙を流す俺に口付ける。

苦しさで、俺は彼を抱き締める。

「俺も・・・・・・愛してる」

漸く其れだけを口にする。

其れは、秘密だった物・・・・・・・。けれど今も正確に伝わない・・・。




アーサーの様子が可笑しい。

俺はボンヤリとそう思う。

何が?と聞かれると困るが・・・・。

アーサーと呼ぶと、怯えたように反応する・・・彼。

為らば、言わないで置こう・・・・。

俺は抱き締められながら・・・・そう考えていた。








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