【小説】

■□ 獣伍親爺漂流記 15 □■




何時も通りの夜。しかし、其れは急に襲われた激痛で叩き起こされる。

痛い・・・・

体を丸くし、其の痛みに耐える。

息が出来ない・・・

「ブラッド!?」

声すら出ない其れにアーサーが気づく。

台に乗せられ、廊下の蛍光灯が俺の上を通っていく。

急遽オペ室に運ばれる俺。

彼の心配そうな顔を、汗にまみれで疲れ果てた俺が笑ってやる。

何そんなに心配してんだよ・・・・御前。

朦朧とした意識でそう思っていた。

混沌と意識の中。

5時間に渡る格闘。

泣いている声が遠くでする。

意識が暗転する。




泥の様に寝る俺は、気配を感じて起きる。

気づくと其処は白い何時もの部屋。

目で部屋を追う、サイドにはボンヤリと人影。

「ブラッド・・・有難う」

アーサーだ。よろよろと奴に手を伸ばす。直ぐに、手を両手で握られキスを受ける。

手が濡れている、気づくと奴は静かに泣いていた。

「・・・泣くなよ」

笑って言ってやる。

脇に目線をやると、其の子は居た。

俺の子・・・?

生まれてきた子は、イメージしてたよりも随分と小さかった。

眠っているのか、とても静かだ。

女の子らしいが、赤い髪・・・顔は俺に似ない事を祈る・・・

「リリーって名前にしようかと思うんだ」

「リリー・・・良い名前だな・・・」

何だか、現実味の無い其れだが、手に触れたモノは確かに存在していた。




是が切っ掛けだったのか。アーサーは夜遅くまで働くようになった。

艦外で生活が出来るよう開拓する計画を実行に移すのだそうだ。

必然的に仕事も増える。

俺はというと、出産の負担が予想外に体に重く、体を自由に動かすには幾分時間が掛かるようだった。

意思どおりに動かない体に、もどかしさを感じる。

今日もアーサーは深夜まで仕事をしたようだ。

ベッドで横になっていた俺の隣に潜り込んで来る。

「ん・・・」

「起こしちゃったかい?」

「いや・・・」

少しやつれた・・・俺は奴の頬を触る。

優しく笑い、抱き締められる。

軽く触れる様に口付け。

暫くすると、寝息が聞こえてくる。

多分、是は幸せって言う物なのかもしれない。

闇の中で只、銃を抱え、目を瞑っていた時に比べれば。




物々しい足音。

部屋が開けられる。

何だ・・・?

何時もと違う空気を感じ、リリーが泣きじゃくる。

俺は不安を掻き消す様に、リリーをきつく抱く。

腕を赤く染めたヨハネスが其処に居た。

「どうした!?」

俺は、奴に近づく。

「すまん・・・・探索中に崩落が・・・・あって」

俺は、背後に続いて来るだろう、アーサを探す。

ノエル、ライアン共に血を流して座り込んでいる・・・・

3人とも顔色が悪く、目線を俺から外している。

襲ってくる、不安。

只居ないのは独り・・・・アーサーは?!

「アーサーは?・・・なぁ??」

悲鳴のような問い。

ヨハネスは辛そうに目をゆがめ、噛んだ唇から声を吐く。

「・・・・・崩落に巻き込まれて・・・谷底に・・・」

その場で座り込む途中、ヨハネスに支えられる。

そんな現実って・・・・・・

只、涙、喪失感。

昨日まで近くに居たものが無くなる・・・・・

其れはずっと経験してきたはずなのに・・・・・

支配するのは、壊れるのを防ぐための、麻痺。

深い深い意識の海に俺は沈んだ。






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