【小説】

■□ 獣伍親爺漂流記 13 □■




着いた部屋、外部からロックがかかる独房型の部屋だった。

俺は、ヨハネスにドアの外でまってるよう言う。

ロックの外れる音の後、扉の開く重い音が響く。

「よぉ・・・・・・・」

俺が話すと言って来たのだが、実際遭ってみるとどう話を切り出そうか途方にくれてしまう。

ライアンは幾分か痩せ、髭が少し伸びていた。

髪も綺麗にセットされた物ではなくなっていた。

「先輩!生きてたんですね!」

奴は安堵したようだ。笑顔がこぼれる。

「・・・アーサー博士から話は聞いてるんだろ?」

「ええ・・・・・・・・気の狂った話です」

「まぁな、でもこうなったら生き抜くしかない。」

意外な返答が帰ってきたようだ、そりゃそうだ、唯一の味方だと思ってるのだから。

「先輩は其れで良いんですか?」

奴は驚いたように、縋る様に声をだす

「選択の余地なんて俺には無かった、只この状況を受け入れるか受け入れないか・・・・・」

「先輩!」

「悪いことは言わない、此処は全員で生き残るってのが先決だ、奴のやったことがどうあれ

御前は、それに参加しなければ良い事だ」

「貴方は女の様に組み敷かれて、男としてのプライドは無いんですか?!」

叫びの様な声、つかまれる手。

噛み付くように口が合わされる。蹂躙される舌、息が上がる、咄嗟に俺は唇を噛む。

奴は急な痛みに身を引き、口を拭う。口元には血が滲んでいた。

「幸せしか味わったことの無い餓鬼に何がわかる?俺のプライド如何こうは御前に関係ない話だ」

俺は奴の襟首を掴み引き上げ、睨む。

「所詮御前はお城の中のプリンスでしかないんだよ、プリンスはプリンスらしく御綺麗な世界だけ見とけ、

だがな、他人に其れを強要するなよ?お門違いだ。」

口を噛み締め俯く奴、俺は諦めて手を離す。

「俺がそういうにされるを見たくないってんなら見なければ良い事だ、だがここでずっとこうって訳にも行かない

食料にだって底はある。後は御前で考えろ」

俺は立ち上がり部屋を出て行こうとする。

「・・・わかりました。」

奴は選んだ、見ないで生きる・・・・賢い生き方。

心に苦い物が広がった気がする。眩し過ぎる、闇に居るものには・・・・

「けど、若し万が一のことがあったら・・・命を掛けて貴方を守ります、これだけは譲れない。」

「・・・好きにしろ」

俺は外に出た、ヨハネスは入ってきた時点からずっとそのままだったのだろう幾分違わぬ位置に居た。

じっと無言で見られる視線が痛くて俺は目を逸らす。

「・・・・掴まれ」

先ほどと同じ言葉、動きでおれに言ってくる。

俺は先ほどと同じようにして歩く。

背後からは、ライアンが目を背ける様に下を見つめ付いて来る。

すると、ふらりと部屋から出てくる姿がある。ノエルだ。

「よお。それはなんだ?」

タバコを銜え、片眉を上げ問われる。

「俺と今回の警備で一緒だった奴だ、一応は後輩だな」

「へぇ、ブラッドの同僚様ってわけね・・・・・まぁ、こうなっちまったんだ囚人だの警察だの関係なしって事で」

ノエルは手をライアンに差し出す。挨拶のなのだろう・・・・

ライアンは見てみぬふりを決め込んでいた。

「ブラッド、こいつに長生きしたけりゃ、頭をやわらかくしとけって言っとけ。」

表面は笑ってるが、決して笑ってない。

「ノエルすまん・・・・」

「まぁ、色々あるみたいだからな、俺もそこら辺は察してるさ。だがな、ぶっちゃけた話、御前以外の奴はどうなったって知ったこっちゃ無い」

そう、結び目は俺。だからと言ってどうすることも出来ないが。

「ところで、食料の備蓄は今どうなってるんだ?」

俺は不安に思い、聞く

「持って三年だろ」

タバコを指に挟み、煙をくゆらせ言った。

まぁな、幸か不幸かノエルがほかの囚人を遣ったおかげだが。

「嗚呼、お坊ちゃん、そう睨むな。俺と奴が親しく話してるのが気にいらねえって顔じゃねえか」

「先輩!こいつは、一級犯罪者ですよ?!」

「あー・・・・・」

手が腰に掛かる・・・・・俺は咄嗟にノエルの腕を押さえ込む。

「やめろ、頼む。ライアン!おまえも・・・っ」

ふと、平行感覚がおかしい事に気づき視界が暗転する。

「ブラッド!?」

遠くで声がした・・・






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