【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 6 □■




今日から休んでいた勉学・武芸の再開、様子を見ながらでは有るが・・・・

教本を開きながら、この世界のことについて学ぶ。俺は意外とこの時間が好きだった。

机を向かい合わせ、読みながら進む。

『先日はこの世界を構成する3つの国をお教えいたしましたね・・・ええと次は・・・

この世界の主の神である3人の神と我々一族のあらましを・・

天の君を筆頭とした天の一族、

月の君を筆頭とした月の一族、

2つの一族によりこの高天原と治め、

そしてもう一つ荒の君を筆頭とした荒の一族、

彼らは根の国を治めております。

また、其の一族此処に始祖たる主神が

天照大御神、月読尊、佐之男命の3神で、

其の名の通り、天照大御神は天の一族、

月読尊は月の一族、

佐之男命は荒の一族が末裔となります。』

ふむふむ・・・。2つ世界があってと・・・あ。

ふと、聞きたかった事を思い出す。

「藤丸、対の者ってなんだ?」

この前、違う俺が言ってた言葉・・・・・。

『・・・・・天の一族は天の君と北斗様しかいらっしゃらないのは知っておりますね?』

とても言いにくそうに言うのは気のせいだろうか?

「藤も萩丸も天の一族ではないの?」

又疑問が生まれる。

此処の屋敷の人々は俺と同じ人種にしか見えないのだが・・・。

『我々は代々の天の君が作りし巫子でございます。

それは天の一族の能力、命を作ることが出来るのです。

貴方様方と我々巫子は全く違います』

小さな矛盾に気づく。あれ・・・・?

「じゃあ、天の一族は2人しかいないのにどうやって続いてきたの?

巫子と子供をつくるのかな?」

俺は可愛い巫子をあてがわれるのだろうか?そんな事を考える。

『いえ、天の君と天の宮が対になり、次代の君と宮を産んできました。』

「へぇ、けど朧には天の宮居ないよね?それに男同士だったりしたら如何するの?」

『はい、ご存知の通り今の天の君には居りません。

昔、弟の天の宮さまがいらっしゃったのですが、先代の月の君との密通でこの高津原を追われ、

北斗様を生まれた後、亡くなられたようです。

天の一族は、主神天照大御神の力を借り、子を成します。性別はさして重要な事では有りません』

カリンの居た世界ではありえない事だ。男と女で子供を成すのが常識である。

『天の一族は、繁殖能力の低いのです、儀式の力と借り漸く子が成せる。

そうでもしなくては、一族は当に滅んでおります』

「天の宮は居なくなっちゃったってことだよね?子供って・・俺の代で天の一族が無くなっちゃうよ?」

天の宮は死んだ俺の母親だ。萩丸と藤丸は俯き唇を噛む。

『・・・疎の様な事の無い様、代わり北斗様が元服の暁には天の宮となり、対の者となっていただかなくてはならないのです』

藤丸は言いづらそうだった・・・俺は、頭を鈍器で殴られた様な眩暈を覚える。

『対の者とは、天の君・天の宮互いのことを示します。解りやすく言いますと、つがいの相手と言いましょうか・・・』

・・・・・・血の繋がった伯父と結婚して子供を産めということか。

『もし、天の一族が無くなりますと我々だけでなく、森羅万象が崩れこの世界自体が無くなってしまうのです』

嗚呼、だからこんなにも彼らは言いづらそうだったのか、と納得した。

顔も知らない、おかあさん・・・何故貴方は愛を貫いたのですか?

世界が無くなるって解っても?

全世界を敵に回しても?

今の俺には大きすぎて頭がついていかないよ・・・

けど是は解る。カリンの世界・・・・・・・無くなっちゃったら・・・・・・俺は悲しい

カリンが笑って生きられるよう・・・・・・

でも、別の俺は、俺の対の者・・・・っていった・・・・?

良くわからないことが沢山有り過ぎて、俺は頭を抱える。

それがとても気になって俺は今日一日どうすごしたか思い出せないほどだった。

何故か無性に、一人で居たくなくて。

あの、赤い童の笑みが浮かんだんだ。

俺はこの前の子に逢いに行こう・・・・・そう思ったのだった。



人々が寝静まった夜・・・・・・月の夜は昨日と同じように冴えた光で池を映し出していた。

床を抜け出した、俺は鈴を手に庭を抜け出した。

池を伝っていき、暗闇を彷徨っていると声がする。

『此処だ』

手を掴まれ、引かれた。

急な事で俺は、何かに脚を取られてしまった。

地面に打ち付けたと思ったが存外柔らかい

「いってぇ・・・・・・・・、あ!ご免」

あの童の上に尻餅をついていたらしい。

『何、どうってことはない。』

埃を叩き、起してくれる。

近くにあの綺麗な花は咲いていた。

孤独だけどとても綺麗な花・・・・・・何だか悲しげだ。

『何か悲しい事でもあったのか?』

・・・・そうか、俺が悲しいから悲しく見えるのか。

頭をぽんと軽く叩かれる。

「・・・・・どうしようも無い状況で、やらなきゃいけないんだけど・・・・・・俺・・・・・・」

赤い花がボンヤリ滲んで来る・・・・・知り合って間もない奴に言うのはお門違いなのは解るけど・・・

誰かに聞いて欲しかった・・・・・・

『泣くな・・・・』

只抱き締めてくれる・・・・・・それが有難かった・・・

『御前が来てくれて。・・・・救われたんだ・・・・・吾は・・・・この永久の孤独から・・・・・』

独り言のように言う言葉・・・・・・・

『御前に泣かれると吾も悲しい・・・・何があっても・・・・吾は御前の味方だ』

彼もずっと孤独だったのか・・・・・・朧も・・・・・・皆笑えれば良いのに・・・・・・・・

俺はそう思いながら目を瞑る。

涙がポロリと一粒落ちた。




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