【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 14 □■




然し、静寂を破った者が居た。

『俺ハ継ガナイ・・・・絶対ニダ』

火に油を注ぐ状態で、南斗が口を開く。

『ほう・・・・・・・・成らば、御前が消える・・・・そういう事か?

見誤ってもらっては困るが、この掟は血の血統を残す為の物だ』

故に弱いものは要らない・・・そういう事。

『成ラバ、力ヅクデ・・・貴方モ其方ノ方ガ解リ易クテ良カロウ』

見開かれる目、次の瞬間笑みが口を彩る。

『常夜と同じ事を言い出すとは・・・・良かろう。俺に勝ったら御前の条件を飲んでやる』

其の言葉が終わると一陣の風、手に表れたるは、漆黒の剣二本。

南斗は一本を手にする。月読尊も残りを・・・。

逃げ惑う両一族の者達。

場は混乱が支配する。

然し、其の時。

叫びと共に、黒い影が南斗に倒れこんでくる。

其れに気づき体が動く・・・・・・・。

走馬灯の様に・・・動く景色・・・。

赤い・・・・彼のような・・・・其れが散る。

視線の端には、血で濡れた守刀を抜き、髪を乱した、現「月の宮」望が、般若の面で居た。

南斗が叫ぶ。

獣の様に咆哮し、黒い影に向けられる金の目。

其れで、現に戻されたのか彼女は振るえ、逃げる。

次の瞬間に、彼女を切り伏せる。

熱い・・・全身が・・・・何故か。

気づくと、朧が俺を助け起こしてくれる。

何時もは穏やかな彼だが、このとき何故か感情が面に出ていた。

驚き、悲しみ、・・・涙。

慟哭。

朧・・・・どうしたの?

思うように動かない自身の手を懸命に動かし、彼の顔を撫でて落ち着かせてやろうとする。

彼の白い顔に朱が塗られる・・・。

嗚呼、俺の手が朱だから・・・・朱は血・・・・。

そうだ・・・・。

俺は思い出す・・・現実を。

月の宮の刀から南斗を庇ったんだ・・・・・。




『・・・・・・・南斗。北斗を助けたくば力を貸せ』

泣き崩れた男が深い慟哭の縁で言う。

『無論』

天の君から紡がれる言葉、其れは「天照大御神」の降神の祝詞。

手より出た其れは、白く発光した鏡。

握り割る。

次の瞬間・・・・、

手を北斗に沈める。

南斗から紡がれる言葉、其れは「月読尊」の降神の祝詞。

手より出た其れは、黒く発光した勾玉。

勾玉の列が北斗に絡まる。

抜けようとする魂を縛り付ける為・・・・。

天の君がしたのは禁呪・・・・・・・。

鏡を北斗に与え、主神の力で直す・・・・・・。

傷は癒え、顔色も戻った北斗が腕の中に降りてくる。

血を口の端から流した朧が其れを受け止める。

苦痛で眉間に皺を寄せていたが、彼の目は優しかった。

呪は行った者の体に返る・・・・この世の摂理。

朧の体には、北斗の負った傷が移っていた。

鏡は北斗に移ったまま・・・・その意味は・・・・・・・。

解りきっていたが・・・・、是をすればどうなるか・・・。

自傷気味に笑う。

身を屈め彼を抱く。

『愛してる・・・・北斗、俺の分も生きてくれ』

彼に口付け。

触れるだけの其れに、心を込める。

一瞬のはずなのに、とても長く感じる。

唇の甘い感触。

今生の別れだから。

苦しげに歪められる、南斗の顔。

其れに笑って答えてやる。是で北斗の心は自分を忘れないから・・・。

ずるいのかもしれないが・・・・最後に是くらいは良いだろう。

目を見開く彼からは涙の滴、
恐らく鏡が俺の全ての記憶を伝えてる筈だ。 この心も・・・・・・。 残していく物の重さを重い、苦しくなる。 然し、其れはふと、軽くなる。 大丈夫だよ・・・・。と背後で優しい声が掛けられる。 肩に手が乗る。居ないはずの彼の。 目を閉じ其れを感じる。 嗚呼。振り向かないでも解る。 心が重いものから放たれた・・・。 黒い彼を・・・・親友で、愛しい人の父。 愛しい人と瓜二つの彼。 迎えに来てくれたのか・・・暖かい気持ちで微笑む・・・・・。 光りの中へと消える意識。






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