【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 13 □■




神々の住まう「高天原」、

其処は

「天照大御神」

「月読尊」

弐神が治めし世

「天照大御神」の末裔たる「天の一族」、

其の長「天の君」の証たる神鏡「八咫鏡」が選ぶは「年長の者」

「月読尊」の末裔たる「月の一族」、

其の長「月の君」の証たる神璽「八坂瓊勾玉」が選ぶは「最強の者」

死者の住まう「根の国」

「佐之男命」

壱神が治めし世

「佐之男命」の末裔たる「荒の一族」、

其の長「荒の君」の証たる神剣「草薙剣」が選ぶは「佐之男命、只一人」

其れは世の理、曲げる事適わず。

古の世より紡がれし掟。




月の君の代替わりの儀式。俺は其れに呼ばれてた。

湖面の中央に立つ寝殿、俺が皆の前でお披露目をした処だ。

月の一族の寝殿と天の一族の寝殿の丁度真ん中に位置し、鏡のようなお互いの寝殿を唯一繋ぐ接点だった。

時は宵闇。満月が湖面を照らし、寝殿の天井に反射していた。

白と黒の者が左右に別れ互いに面を合わせる。

中央には通り道の朱の布が敷かれ、上座には現「月の君」と、朔が居た。

少し下がった、黒の者の列に現「月の宮」望と、次の「月の宮」。

上座は黒で占領されて居た。

現月の君と朔の間にある何も無い台が気になったが・・・。

あ、そう言えば月の宮の名前聞き逃してしまっていたな・・・。

と暢気に事が終わるのを見ていた。

俺の産んだ三つ子は、藤丸と萩丸にあやされ背後に居た。

目の前の膳に空席が一つ有る事に気が付く。この席は一族が必ず出なくては成らないので、席は空く筈が無い・・・・。

然し、暫くすると場内がザワザワと騒ぎ出す。

南斗が苦々しげに入ってきたからだ。数人の者に連れられ・・・見た目でも解る位、連れて来られたのが心底嫌だと。

彼は俺の前にある膳にどっかりとわざと音をたて座る。

俺は、他の者に見えない様に手を振る。其れに気づき、微笑む南斗。

双子なのに、対岸の月の一族に居るのが何故か距離を感じさせる・・・・。

俺と彼の顔立ちが全く違うので、其れを知るもの意外気づくものは居ないだろう。

翡翠色の瞳に朱の縁取りをして、口には独特の紅。

男にしては線の細さが目立つ白い肌に最近一層白さを増した癖のある灰色の髪を一本に結い上げ、腰まで垂らした俺。

金の瞳に黄金色の縁取りをして、男らしい肉体を彩るような黒い肌に銀の滝の様に流れる髪を緩く結び、腰まで垂らした彼。

少し前まで同じ肉体を共有させていた筈の、全く形の違う彼を俺は誇らしく思っていた。

力も強く、月の一族から跳びぬけているのは俺でも解っていた。

見たことの無い父、其の血を受け継いだのだという。

相当力が強かったと、天の君から聞いていた。

然し、武術は俺も似たらしい、今では月の君を打ち負かすまでに成っていた。

只過ぎるだけ・・・そう思った儀式。

然し、其れは、「月読尊」降神の祝詞が始まった時点で消えうせる。

突風が部屋を支配する。

黒い円が現れ、其処から人の型が現れる。

両一族が平伏して向かえた・・・其の時。

黒い雷を放ち表れた月読尊は両一族を一瞥すると言い放つ。

『長たる条件は何と考える!前の月の君の交代の件とて渋々受け入れし物ぞ?

一族の掟を破れば・・・・どうなるか解ろうぞ?』

その言葉を聞き、叫ぶように言う現の月の君。

『否、我等が子の中で一番力の強きものは朔で御座います故、掟は破っていないはず・・・・!』

『何を言っておる?一族の中で強きものは、常夜の子南斗だろう!御前の目は節穴か?』

雷と風は一層強くなり、月読尊の怒りが大きくなっていくのが解る。

一瞬即発・・・一族の者、全ての体が凍りつき動けないで居た。






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