【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 12 □■




毎夜の様に遭っていた、赤い彼に遭いに行こう、ふとそう思う。

漸く遭えた兄弟を合わせたかった。

「南斗、遭わせたい人が居るんだ。俺の友達なんだけど・・・・」

硬く抱き合った腕を緩め、俺は言ってみる。

寄せられる眉根。訝しげに。

「その・・南斗に遭うまで、心の支えになってくれた大事な友達なんだ・・・」

俺は、伝え間違いの無いように言葉を選んで言う。

その言葉を聴いて安心したのか、フワリと笑う、

『ソウダナ・・・、俺カラモソイツニ礼ヲ言ワネバ・・・』

頭を優しく撫でられる。そして、額に触れる唇。

心地良いそれに俺は目を閉じた。

『北斗見舞いに来たぞ!!』

と、遠くで声がする。

見てみると、暫く遭わなかった、月の君の子、朔がいた。

彼らとは月の君と剣を交えて以来、その後も仲良く交友を重ね、今では親しい友の一人となっていた。

俺を見つけ、親しげに手を上げる。

13年間の年月は、彼を変えていた。身長は父親の月の君と同じ位に成長し、金髪の髪も腰まで伸びた。

その顔も、精悍な顔立ちになり、通った鼻梁が男らしくなっていた。

然し、南斗に気づくと訝しげに眉を寄せ笑顔が消える。

「あ、紹介するよ朔。俺の双子の片割れ、南斗だ。一回会ったことはあるはずなんだけど・・・」

朔の表情は浮かぶ事は無かった。

南斗もそ知らぬ顔だ。

見ると、彼の大きな体に隠れるような女性が一人。

「あれ?朔、その方は?」

珍しい俺達以外の人に興味が向く。

『あ、・・・ああ、こいつか次世の月の宮。俺今度、月の君を襲名する事に決まったんだ。』

と、照れた笑顔を浮かべ俺を見る。

次世の月の宮は朔に挨拶を促され、オズオズと初々しく礼をする。

「可愛い方だね、宜しく俺は北斗」

そう言うと、手を出す。

其れに驚いたのか、彼女は朔の影に隠れてしまう。

『北斗は外見だけ見ると、近づきにくいからな・・・』

と、からかわれる。

「失礼な、・・・斜に構えた感じに見えるのかな?」

そんな風には微塵も思ってないのに・・・

『いや・・・その、まぁ気にするな御前が良い奴ってのは俺達が良く知ってる』

と言い、肩を叩かれる。

『北斗ニ近付クナ・・・』

と南斗が牙を剥く。

「南斗?!どうしたの?」

其の儘、朔の手を払い、引き寄せる。

『・・・何だ御前・・・・』

朔も眉間に皺を寄せ、牙を剥く。

「南斗!朔!何やってんの!」

驚いて仲裁に入る俺。

「・・・ほら、彼女も吃驚してるじゃないか」

朔の許嫁はおろおろとするばかりだった。

2人を宥める俺、然し其れは効果が見られず、互いにソッポを向き、

それ以上話すことすら、出来なかった。




美しい満月が湖面を照らす夜。

赤い鈴を手に、南斗と俺は布団を抜け出し、彼を探して湖面を登る。

『ほぅ、北斗以外の者が吾に遭いにくるとは、・・・お帰り。北斗』

赤い彼は何時もの定位置に居た。

「ただいま・・・・」

彼に遭えて少し感傷に浸ってしまったようだ、涙が出そうに成るのを堪える。

南斗を紹介しなくっちゃ。

「あ、双子の片割れに漸く遭えるようになったんだ、彼が南斗。

で彼が、心の支えになってくれた大事な友達、俺が紹介したいって言ってた人だよ」

先ほどの朔の様にならないかおどおどと紹介する。

然し、南斗はすんなりと彼に手を伸ばす。

『北斗ノ片割レノ南斗ダ、北斗ガ世話ニナッタ』

相手は二コリと笑い、出された手を握り返した。

『嫌、吾も御主の片割れには世話になっているのでな、気にしなくても良いぞ』

ふと、赤い彼が言う。

『スマンが、先にあの花畑の方に行っていてくれないか?何、後から、追いつく』

何時ものあの幻想的な蝶の舞う極彩色の花畑・・・・

其れを見て、俺は2人とも仲良くなれそうだ、とそう思った。

「うん、わかった先に行ってる。二人とも色々話しながらゆっくりおいで」

そう言うと、俺は花畑を目指して森の中を歩き始めた。




『剣ノ持チ主カ・・・・・・・・北斗ニハ言ッテナイナ?俺ガ・・・・』

赤い彼は口を開ける。

『剣の持ち主か・・・・・・・・北斗には言ってないな?俺が・・・・』

そして言葉を濁らせる南斗。

『次の月の君は御前と?・・・安心しろその様な事は言っておらん』

『否、俺ハ成ラナイ・・・』

苦虫を噛んだように言う。

『・・・月読尊が許すか?』

赤い彼は、重そうに口を開ける。

『嗚呼、・・・・・荒ノ君、何故北斗ニ遭ッタ?』

攻めるように南斗が言う。

『何、偶々迷い込んだんだよ・・・』

寂しげに目を伏せ、再度心に引っかかる事を口にしてみる。

『・・・許しが出るとは思えんが・・・』

『其ノ時ハ、力ヅクダ・・・』

其処には、強い意志で前を見据える南斗が居た。






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