【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 10 □■




『懐妊であそばされます』

医者と言う其れが言ったのは何時の頃だろう・・・・・

もう幾つの日が過ぎたのだろう。俺はその牢獄でしどけなく凭れ掛かる。

心持、膨れた腹を覗き込む。日に日に侵食される気がして恐怖を覚える。

朧は、何もする事は無くなった。

痛ましげに只俺を見るだけ。

いっそ、独りにさせてくれれば良いのに・・・・。

心に波が立つから・・・。

今夜も只周りの湖面を眺め、水滴の音で眠るのか。

ふと、何時もと違う事に気づく。

目の前で、黒い波紋が広がる。

八ヶのそれは円を作る、くるりと回ったそれの中心が黒く光り、

中から勢い良く、人が出てきた。あれは!

「南斗!?」

『北斗!』

「え?どうしたの?」

『・・・来イ』

檻に手を入れる。

閃光を放ちながら反発される。

「南斗!だめ!死んじゃう!!」

『是クライ、・・・平気ダ』

ニヤリと笑うと目をかあっと開く

破壊音と共に檻が無くなる。

『サァ、急グゾ!』

すると、抱き込まれ、目の前の湖面に沈み込む。

息が出来ない・・・目を瞑る。

しかしそれは直ぐに無くなる。

恐る恐る目を開くと、其処は部屋だった。

響く機会音。定期的な音。

目の前には白いベッド、独り老婆が横たわる。

そんな・・・・・・・まさか・・・・・・・

息も絶え絶えな彼女は俺が見えるらしい。

「あら、お迎えかしら・・・・暫くぶりね。」

皺の刻まれた顔は笑い、同じような手をゆっくりと伸ばされる。

「ごめんなさいね、最後まで一緒に居れなくて・・・」

何を言ってるの・・・俺が・・・・俺が悪いんだ・・・

形が変わってもこの香りは解る。

俺の一番大切な人。
















「カリン!!!!」
















俺は手を強く握る。

そうすれば、行く彼女を留めて置ける気がして。

「あり・が・と・・う・・・・」

彼女は微笑み、手がすり抜ける・・・・・・

何で?死なないでよ・・・笑って生きて・・・・其れだけの幸せを願ったのに・・・

啼く、細く、長く・・・・・・・

瞬間腹に激痛が走る。

イタイ!イタイ!

異変に気づいた南斗が抱きかかえるように俺を運ぶ。

涙で霞む視界。嗚呼、彼女への罪を考えればそれは生易しい・・・・。




気が付くと俺は牢に戻されていた。

布団の中、俺は霞む視界で南斗を探す。

しかし、其処には。青ざめた朧。

手が強く握られる。

『この牢から出るなとアレほど・・・』

「子は・・・?」

『・・・何とか、持った状態だ』

「そう・・・・よかったね」

今の俺は泣きたかった・・・・カリンの為だけに・・・

『・・・カリンの処に行ったそうだな』

「・・・知ってたの?」

『嗚呼、御前の身を案じ伝えなかったが・・・すまない』

朧は其れを伝えると出て行く。

その後、俺は目を瞑り、静かに泣いた。




在る日、其れは起こった。

腹が、蹴られるように痛い・・・・・・

「あ!痛い!!」

刃物で其処を抉られているようだ。

異変に気づいた看守が医者を呼ぶ

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

『北斗!もう少しだ!』

誰かが俺の手を握る、有りっ丈の力を込め其れを握る。

手が握りかえされる。

暫くして、弱く小さな声が聞こえた。

其れは3つ

俺は三つ子を産んだ。






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