【小説】

■□ 人生と言う名の媚薬 1 □■




俺は北斗、「犬」という生き物らしい。

飼い主であるカリンはそう言っていた。

母親はナントカ大臣賞を取る程の良い犬だったらしいが、何処かの馬の骨とも解らない奴と出来て生まれた俺。

難産だったらしく俺以外の仔犬は生まれても鳴く事は無かった。

そして俺自身も小さく・・・そんなに生きるとは思ってなかったらしい。

其の上、何処の馬の骨とも解らない奴のと子・・・

扱いは当然良くなかった・・・・・。

然しある時、カリンが12歳のときクリスマスのプレゼントに犬を欲しがった。

前の飼い主は、何も知らないカリンに其の犬を押し付けた。

その犬が俺だった。

朝・・・俺は何時もの時間に目を覚ます。

『カリン、朝だぞ!散歩にいこうぜ!』

俺はカリンの布団を引っ張り顔を舐めまくってやる。

「ヴっ・・・・・北斗ぉ・・・・昨日遅かったんだから寝させて・・・・」

そんなの俺には関係ない。

引き続き、カリンの顔を舐める俺。

とうとう降参したらしく目を擦りながら、のそりと布団から起き上がる・・・・。

眠いらしく目が開いてるか開いていないか解らない・・・・

のそりのそりと着替え・・・俺に紐を付けると扉を開ける・・・。

一目散に駆ける俺。其れに半分眠りこけながら・・・引っ張られるように付いてくる。

外は漸く空が白くなってきている時間だった・・・。

何時もの散歩コース。

朝の独特の湿っぽさを感じながら進んでいく。

田んぼの畦道を通り、河川敷を通る・・・・。

色んな犬や飼い主と挨拶をする。

そして途中にある、公園に着くと、紐を解き俺を自由に遊ばせた。

『よぉ、北斗』先客に散歩友達のテツが丘の上で遊んでいた。

『よぉテツ!』テツは雄なのだが俺とは仲が良かった。小さい頃から遊んでたせいかもしれない。

「テツ〜おはよう」少し遅れてやってきたカリンはテツと俺にオヤツをくれる。

オヤツを早急に食べ終えた俺はカリンにボールを強請る。それに気づいたカリンはポケットからボールを取って遠くへ投げる。

俺は一目散に取りに行った。ノーコンなカリンのボールは、歩いている人目掛けてぶつかっていた。

『あちゃー、あんちゃん大丈夫か?』

頭を押えて蹲っている・・・・・・・・・

「せっ!先輩!すいませんっ!」

少しすると、カリンが息を切って走ってくる・・・。

『カリンどうした、知り合いか?』

「いや、大丈夫ちょっと掠っただけだから・・・・」

奴は床に転がったボールを拾い俺に渡してくれた。

『あ、あんがとう!』そう言いながら口に銜える。

「たしか、松宮カリンさんだったね・・・」

「あっ、はい一年の松宮です。」

カリンの顔が赤い・・・・風邪か?

「この犬君が飼っているの?良い犬だね・・・」

穏やかな声で俺の頭を撫でる。

「ええ、でもヤンチャで(汗)」

『カリンには負けるけどね』と俺は言ってやった。まぁ言ってることなんて理解できないんだから

関係ないか・・・・・

奴はクスリと笑った後・・・・何事も無かったように、

「良い犬だね。青毛かぁ・・・・犬種は柴かな?」

「イエ、この子紀州犬入ってるんですが雑種なんですよ」

愛犬が褒められて嬉しくない飼い主なんていない、カリンも嬉しそうに言う。

「そっかぁ。じゃあ君はお父さん似なんだね」

そう言いながら、奴は俺の首廻りを撫でる。

俺は気持ちよく目を細めた。

「先輩も犬を飼われてるんですか?」

カリンはそう聞く。

「嫌・・・飼って居たんだが・・・死んでしまってね・・・」

寂しそうに話す奴・・・。

『元気出せよ・・・・』

そう言いながら手を舐めてやる。

「そうでしたか・・・・あ、うちの子でしたら何時でもお貸ししますよ?やんちゃ坊主ですけど・・・」

そう言いながらカリンが俺を撫でる・・・。

『カリンだって俺に負けず劣らずのヤンチャダロ!』

そう言い返してやる。

「北斗!吼えないの!」

「いやいや・・・・大丈夫だよ・・・そうだね・・・又会えたらその時にでももっと遊ぼう」

「あ、先輩は朝練ですか?」

申し訳なさそうに言うカリン。

「申し訳ない・・・・又会おうね・・・・」

そう人のいい笑みを俺に向け、撫でられる・・・・俺は気持ちよさに目を細める。

奴は「あされん」をしにいくよと言い残し「せんぱい」立ち去った。

何時までも手を千切れんばかりに振るカリン・・・・。

『チェッ!何だよ・・・・この差は・・・』

そう言いながら不貞腐れる俺。

「キャー!天野先輩に会えるなんて朝起きは三文の徳ってやつね!あ、でもこんな格好で会っちゃった・・・・」

カリンは何やら騒いでいる・・・・・よっぽど「せんぱい」に会えて嬉しかったのだろう。

でも俺は余り嬉しくなかった。奴は良い奴だが、俺はカリンが好きだったから・・・・・・・・・

俺は叫ぶカリンを無視して鉄と遊ぶ。

『鉄遊ぼうぜ!』

『良いのか?飼い主ほっぽらかして・・・・』

心配げに聞かれる。

『・・・・良いんだよ』

どうせ、今話しかけても上の空なんだから。

そう良いながら俺は鉄の飼い主にボールを銜えて行き・・・・尻尾を振る。

年配の女性の鉄の飼い主はとても優しい。

「あらあら・・・ボールで遊びたいのね・・・ほれ!」

投げられる其れを二匹で取りに行く。

尻尾を勢い良く振りながら。

それを数回繰り返していただろうか・・・

少しするとカリンが独りな事に気づいたのか駆け寄ってくる。

「北斗居ないと思ったら・・・・鉄と遊んでたんだね・・・・スイマセン鉄のおばさん」

「いいのよ・・・・良い運動だったわ」

そう言いながらボールを俺に投げる。

それを俺はジャンプしてキャッチする。

「ほら、そろそろ帰らないと遅刻しちゃう・・・」

「あら・・・・北斗ちゃんまたね」

『北斗又な!』

そう言うとオヤツをくれる・・・それを頬張りながら

『鉄、鉄のおばさん!又な!』

そう言いながら家に急いで戻ったのだった。





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